現代占星術より伝統占星術がしっくりきた理由

伊泉 ちなみに、僕が占星術を始めたのは、タロット占いを身につけた全然後です。タロットをやっていると、占星術も出てくるからです。
特に19世紀末の「黄金の夜明け団」の教えになると、タロットと占星術を結びつけているので、「占星術もやらなきゃ」と思うようになって。
そこで、先ほどお話した、森信さんや幸月さんに少し教えてもらったんですけど、全然身にならなくて。なんだか、あまり好きじゃなかったんですよ。

田中 今は、バリバリやっていらっしゃいますけどね(笑)。

伊泉 おひつじ座がどうのこうのとか、ああいう性格分析に全然興味がなかったんです。全くやる気にならなかったけど、でもやらなきゃいけなかったので、一応やってはみたものの、2回くらい挫折しているんです。
「やっぱ、好きじゃないわ」みたいな。

これ、現代の占星術を批判するわけじゃないけど、本の中で言っていることが人によって違っていて、けっこう根拠がなくて
それこそ、専門的な話をすると「アスペクトのオーブを何度にするか?」といった場合、人によってまちまちなんです。
なぜ、オーブがその角度なのかについての記述を読むと、「私の経験では〜」とか書いてあって、「あなたの経験ですか!?」って思っちゃう。
そういう裏付けのないのはダメなんですよ、僕の性格的に。それもあり、現代占星術は僕にとってダメだったんです。

田中 裏付けが欲しいと思うと、伝統的なものになりますよね。伝統的な占星術の方向に行かれたのは、何年前ですか?

伊泉 ケビン・バークの本が出版されてからなので、2005、6年くらいかな。
あの本では、伝統占星術と現代占星術の線引きがわからなかったから、自分で調べていったんです。その結果、「あぁ、こういうしくみなんだな。ずいぶん違うじゃん、本来の占星術は星座で占えないし」とわかって。

田中 そうそう。古典系の占星術(伝統占星術)の本では、星座は現代占星術と比べるとそこまで重要視されていないですよね。

伊泉 その代わり、重視してたのは「惑星」ですよね。惑星のディグニティ()や、ハウスとか。
星座別の性格描写とかは昔の占星術にはなくて、「身体的特徴」とかですからね。
*ディグニティとは、「惑星がどこの位置にあるかで、そのコンディションの良し悪しを見る」というルール。

田中 あとは、「それが意味する場所」とか。例えば、物を無くした場合、その落とし物を表すのが牡羊座だとすると、牡羊座が意味する場所に注目しますよね。

伊泉 だから、性格分析みたいな要素は少ないし、「いつ死ぬか」みたいな話もいっぱい出てくるし(笑)。

田中 やたら、死に関する記述が多いですよね。

伊泉 そうそう。うんざりするような不吉な予言がやたら多い。何ででしょうね。
たぶん、時代を反映しているんでしょう。昔は人が簡単に死ぬようなことが多かったので、死を意識してたんじゃないでしょうか。

タロットカードに正しい占い方は存在しない

田中 タロットには何種類ものバージョンがありますが、例えば、カードの種類によって、同じ絵柄でも意味が違いますか?

伊泉 違いますね。その部分を皆、よく間違えて解釈します。
「恋人」というカードがあり、どの時代でも同じ意味だと思われているけど、歴史によって絵柄が全く違うんです。それは、“そのカードに込めた意味が違う”ということです。

その点で、トートタロットは面白いですよね。考案者のアレイスター・クロウリーの思想が反映しているので。
例えば、「力」のカードなら、「ウエイト版」だと優しい女性がライオンを手なづけています。「トート版」だと、女性がライオンに馬乗りになっています。

田中 (笑)。そのカードの意味としては、より女性上位的なことを表すわけですか?

伊泉 そういうことなんでしょうね。

田中 「ライダー版」だと、使う人にわかりやすいよう小アルカナを絵柄にしてくれていますが、それより古い「マルセイユ版」だと、絵柄がなくてトランプのような見た目なので、すごくわかりづらいですけど。

伊泉 それは逆に、こう言えます。
現代人は数秘術的な数の意味も読み取りたい人もいるので、そういう人には、いいんじゃないでしょうか。
絵柄に限定されない数秘的な使い方ができるので、使いやすいと思います。

田中 タロットでは、1枚のカードをめくった時に、「正位置」か「逆位置」かで意味が変わると考える方と、「正位置」でも「逆位置」でも同じように考える方がいると思いますが、これに関してどう思われますか?

伊泉 好きな方を採用すればいいと思います。もともと、タロットは「これが正しい占い方」なんてないんです。
ゲームとして生まれたカードを、皆が工夫して使うようになったものなので、逆位置の意味を採用するかどうかは、自分の好きにするといいと思いますね。

ただし、マルセイユ版のように古いタロットだと、逆位置の解釈は存在してないんです。そもそも、絵柄に上下がないので。
トートタロットも、逆位置の解釈がありません。カード同士の元素のディグニティで判断するからです。そのディグニティが悪いと、逆位置のような意味になります。
その意味で、逆位置の解釈を取り入れたい方は、ライダー版のタロットを使うといいと思います。

田中 じゃあ、伊泉さんが好きで使っているのは、マルセイユ版という感じですか?

伊泉 そうですね、ユーモアがあるので。
トートタロットだと、考案者のクロウリーの思想がガンと反映されているし、ウエイト版も考案者のウエイトの真面目な思想というか、説教くさい感じがあるけれど、マルセイユタロットの場合、背景になっている絵柄は風刺画でウィットに富んでいます。そこがいいんです。
「愚者」のカードなんて、お尻が出ていますからね(笑)。シニカルなデザインなのに、メッセージ性があるのが面白いですよね。

講座では、トートタロットもウエイト版も全部扱いますが、一番多いのがマルセイユ版です。
タロット好きな人は「私はトート派です」みたいになりがちでしょ? 僕の場合、もともとタロット占いを始めた頃から、カードは何でもよかったんです。
「カードの絵柄は何に由来しているんだろう?」という所に興味があったので、特定のカードにこだわっているわけではないし、歴史を俯瞰して見ているので「特にこれが好き」というのもないんです。

カリスマたちが打ち出した独自の世界観

田中 ライダー版タロットでは、考案者のウエイトが買いた『ザ・キー・トゥ・ザ・タロット』という小冊子がありますが、現状、そこに書かれている意味がほとんど使われていないようですが。

伊泉 あの小冊子、あまり読まれていないですよね。

田中 そこから現在のタロットの意味は変質していますよね。その流れが、60年代にイーデン・グレイ(米国で「タロット占いの母」と呼ばれていた)から、変わったと言われますが。

伊泉 と言うよりも、そもそも占い方が載ってない本がけっこう多くて。
つまり、イーデン・グレイ以前のほとんどのタロットの本は、占い方が書かれてないんです。その代わりに、カードの絵柄に託されている哲学や思想を解説していて。
その流れの中、イーデン・グレイは、英語圏で初めて一般的にわかりやすく占い方を解説したんです。

田中 彼女は、どうやって意味を定義していったんですか?

伊泉 ウエイトが書いたテキストを絶対に参考にしているんですよ。
ウエイトのテキストが皆に参考にされないのは、ウエイト自身に責任があるんです。そもそも彼は占いに興味がなかった人でした。「このカードは占いにも使えるけど、それは2次的な使い方だよ」みたいなノリというか。

田中 (笑)。

伊泉 当時のウエイトもクロウリーも、占いに使うことが目的ではなくて、自分の思想の表現手段でした。だから、複雑な絵柄にしていったし、絵柄の解説をしながらも、スタンスとしては「私はこういう世界観をもっている」みたいな感じで。
なので、カードを占いに使う前提ではないんですよね。

ただ、出版事情もあって、ウエイトは占いに使える形の小冊子をつけたわけです。それには簡潔な占いの解説が載っているけど、占いの意味と絵柄が全然合っていないんですよ
彼は占いに興味がないから、フランスですでに作られていたタロット占いの本の解説から、意味を適当に引っ張ってきたんです。

田中 それは、レヴィですか?

伊泉 エテイヤの系列です。適当にその意味を載せて、絵柄も変えているんで。特に小アルカナの絵柄と意味がほとんど合っていなくて。解説の書き方も「〜と言われている」みたいになっていて(笑)。

田中 あははははは。

NEXT:「求めるものは運命を決定づけない占い方」「タロットはカードの意味ではなく、絵柄を読む」「自分に向き合う『リヴィジョンタロット』は面白い!」

おすすめの記事