17世紀のイギリスの大占星術師による名著『クリスチャン・アストロロジー』(ウィリアム・リリー著、太玄社)の翻訳を手がけ、ご自身も占い師と風水師としての顔を持つ田中要一郎さん(写真右)。
そんな田中さんが、占い界の重鎮クラスのゲストを招いてスペシャルトークするのが、この企画。
3回目のゲストは、日本のタロット界の第一人者であり、占星術やタロットの書籍の執筆や翻訳で活躍されている伊泉龍一さん。ユーモアを交えて軽妙にトークする、伊泉さん独特の感性が光る対談となりました。
2人の占術の専門家による、ディープな世界をお届けしましょう。

占うことより、占いの背景にある世界感に注目

田中 伊泉さんはご自身で書かれた本の他にも、翻訳書が多くて。注釈がすごく充実していますよね。

伊泉 たまにね(笑)。

田中 いやいや、あれだけの注釈を入れていただくと、ありがたいですよ。翻訳でチョイスされるのは良書が多いですが、選ぶ基準は何ですか?

伊泉 「日本に紹介したいな」と思えるものです。その基準は、しっかりと体系的に書かれていること。
入門者向けのような簡単な本だと他に上手に書かれる方がいるので、自分ができることとしては、もう少し専門的なものにしようと思って。
そういう思いが、昔からあるんですよ。「自分が今、手がけているような翻訳本を全然知らなかった頃に、読みたかった本にしたいな」というのが。
だから、昔の自分に宛てて書いている感覚がありますね。

田中 なるほど、そういう基準なんですか。
いわゆる、モダンクラッシックと言ってもいいような名著ばかり手がけられていますが、ご自身が書かれた本でも、歴史的な部分にアプローチされていますよね。

伊泉 そうですね。そっちの方が好きなんです。
僕はもともと占い好きでも、占いファンでも全くなくて。こう言ってはなんですが、占いの結果自体に全く関心がなくて。誰かを占ってあげたり、自分のことを占うことも。
普通、占いを習得すると、誰かを鑑定したくなりますよね? 僕の場合、そういうことに関心がなくて、「これって、どういうしくみになっているんだろう?」と探求する方に気持ちが向くんです。占いの背景にある世界観や過去の歴史が、どうしても気になってしまうんですね。

田中 「しくみを知りたい」というのは、人生のしくみを知りたいのとは、また違うんですか?

伊泉 うーん、どうなのかなぁ。僕の場合、「昔の人はこう考えたのではないか?」みたいな部分なんです。
昔、好きで読んでいた本のジャンルの一つは「科学史」で、科学の歴史みたいなものです。その科学史の中に占星術が登場するので、「昔の人は、人間と宇宙の関係をこんなふうに考えていたのか・・・」と思えるのが面白くて。

僕は普段、人を占うことはなくて、講座で教えるばかりですが、その内容も占い的な部分は少なくて、占いの背景にある話の方が多いですね。

田中 ということは、占いでどう解釈するかとか使い方とかは、あまり教えていない?

伊泉 そうなんです。でも、そっちの方が要望が多いので応えたりするけど、好きなのは、そっちの方じゃないんです。

目的のない人生の中で出会った占いの世界

伊泉 もともと、田中さんは人生まっすぐに生きてましたか?

田中 まっすぐじゃないです。今でも脱線してますから(笑)。

伊泉 僕の場合、学校を卒業後、人生で何もやりたいことがなくて、ダラダラ生きていたんです。そんな中、たまたま出会った先輩方がいて。
これ、けなしてるんじゃなくて、僕にとっては褒め言葉なんだけど、彼らは「ダメな人たち」なんですよ。要するに、普通に社会に適応できない人たち
それで、「あぁ、こういう人たちがやっていける世界なら、俺、ここがいい」と思ったんです。“ダメな人たちだから、自分もなじめる”みたいな。

田中 それは何歳くらいの時ですか?

伊泉 25歳の終わりくらいかな。当時、最初にタロットを習った人が、イーデン・グレイの日本語訳の監修をされている幸月シモンさんと、現在、占いの学校アカデメイアの学院長をしておられる森信彰雄さんでした。

田中 そうだったんですか!

伊泉 普段、こんなことしゃべらないですけど(笑)。

タロットへの情熱から書き上げた本格的な本

田中 下積み時代はあったんですか?

伊泉 もちろん、ありましたよ。30代になって最初の書籍『タロット大全』(紀伊國屋出版)を出版するまでは、何の肩書らしいものもありませんでしたから。

『タロット大全』
伊泉龍一著/紀伊國屋書店

田中 『タロット大全』は、確か600ページくらいありますが、書き上げるまではどうでしたか?

伊泉 あの本は、若気の至りで、勢いで書いちゃった感じです。時間をかけて下調べしたので、7ヵ月くらいで書き終えましたね。意外にスラスラスラッと。
その合間に、周りの人にタロットをちょこっと教えたり、あとはダラダラしていました(笑)。

田中 えぇー! 勢いだけで、あの本は書けないですよ。タロットの歴史や図象を詳細に説明してくれていますし。
参考文献に挙げられているのは数多くの英書ですが、英語は習得されていたんですか?

伊泉 そんなに得意じゃないですけど、好きだとやっちゃうところがあって。
僕は小さな頃からSFが好きで、10代の頃には日本語で訳されている本を読み尽くしていたから、読んでない未訳の本を読みたくて英語を学んでいたんです。

田中 そうだったんですね。これだけの参考文献を読まれたということは、洋書を買っていたんですか?

伊泉 そうですね。本は何でも買っちゃう方なので。特に、タロットと名の付いている本を全部買う、みたいな(笑)。そんな勢いで、アメリカのAmazonで買っていました。

田中 じぁあ、けっこう送料かかりますね。たぶん1冊で3000円くらい・・・。

伊泉 かかりましたね。船便でいつも安い値段で送ってもらっていましたが、昔はそれしかなかったですよね。でも、今よりも感動がありました。「あ、アメリカから届いた!」という感動が(笑)。

田中 それ、わかります(笑)。

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