こんにちは、人相見のいくらです。
日本の神社は「除災招福」「家族繁栄」「学業成就」など、様々なご利益を授けてくれます。中には「顔に関する病気を治す」「美容面で美しさが増す」など、顔に関してご利益のあるものも。
人相を長年探究する私にとって、顔は外せないテーマです。今回も「美」に関するご利益のある寺社仏閣をリポートします。

光三郎とお絹の悲哀の物語「袈裟塚耳無不動尊」

今回ご紹介するのは、三峰神社内にある「袈裟塚耳無不動尊」になります。東京メトロ日比谷線「三ノ輪」駅で下車し、明治通りを南千住方面へ向かって歩いていくと、住宅街の一角に「三峰神社」の入口が見え、三峰神社と、その隣に「袈裟塚耳無不動尊」が鎮座しています。
こちらの不動尊は「耳の病の平癒」に御利益があり、「穴をあけたお椀」を奉納する習わしがあります。

 

住宅街が隣接し合う中にある、参道の入口。

 

こちらが、三峰神社。

 

三峰神社の右側にあるのが、「袈裟塚耳無不動尊」。

 

「耳なし不動尊」として愛され、ご利益にあやかった人からは、穴を開けたお椀が奉納されている。

 

左耳のない、不動明王。

 

「袈裟塚」の上に建てられた、不動尊の裏側。

 

「袈裟塚」の上に立てられたこの不動尊には、とある悲哀の物語が伝承されています。
人相的に申し分のない、どんなに美男美女でも、思いも寄らない運命に翻弄され、見た目も健康状態も大きく変わってしまったという言い伝えです。
今回は、このお話を中心にお伝えします。

 

美男・美女の婚約者同士に待ち受けていた運命

時は江戸時代、特に享保と呼ばれていた頃、筑後(現在の福岡県南部あたり)柳川の城主、立花家の家臣に「光三郎」と呼ばれる侍がいました。
光三郎は藩の中で一番の美男子で、同藩の佐野五左衛門の娘で、こちらも藩の中で美人で名が通っている「きぬ」とは許嫁(いいなづけ)の関係でした。

ところが、きぬに横恋慕していた同藩の兵馬という放蕩者が、ある夜、何人かの悪漢をつれて佐野の邸宅に押し入り、お絹の父母や兄弟を惨殺して、きぬを連れ去ってしまったのです。

これを聞きつけた光三郎は絹と兵馬の行方を追い、遂に江戸に上京しました。しかし江戸でも行方がわからず、自分の不甲斐なさを嘆き、命を落とした佐野家の父母兄弟の霊を弔おうと考え、上野東叡山のとある院に入り、光慧法師となりました。

出家して再会を果たすも、お金の使い込みで窮地に

さて、翌年の春、光慧和尚は上野山内にある清水堂の前で、花見をしていた吉原の遊女一行の中に、きぬの姿を見つけ、ようやく再会を果たすことができました。
きぬの話によると、連れさらわれた後、筑後(福岡県)から神奈川宿(神奈川県)まで落ち延び、兵馬は悪事を働いていたが、遂にお金が底をつくと、きぬを吉原の遊郭に売り飛ばして、その後は行方知れずとのことでした。

その後、光慧和尚は、仏の戒律を破り、院のお金を幾度も持ち出ては、吉原のきぬのところへ通い詰めました。
しかし院のお金を使い込んだことが発覚すると、戒律破りとお金の使い込みの咎で、光慧和尚は院を追放されます。
その後、たまたま知り合った、三河島村(今の荒川区、荒川と町屋のあたり)で植木屋を営んでいた久兵衛が光慧の身の上に同情し、久兵衛の取り計らいで、同村にある仙光院の住職となることができました。

病の苦しみと罪をあがなうための「袈裟塚」での祈願

しかしその後も、戒律破りなどの仏罰が光慧和尚を苦しめ、悪い病気にかかり、腰が抜け、耳がそげ落ちてしまいました。
ある夜、同寺のご本尊、不動明王が和尚の夢枕に立つと「汝、仏門に仕える身として戒律を破るとは何事だ。だが、村人の諸難を救うことができれば、その罪は許されるだろう」と言いました。

お告げを受け、和尚は早速、村人を救う一環として、翌月、門前に自らの法衣を埋めて「袈裟塚」とし、日夜、五穀豊穣、往来安全の祈願をしました。
これが、「袈裟塚」の由来とされています。

しかし、和尚の悪病は癒えることなく、何年か後、遂に入寂(聖者や僧侶が死ぬこと)されました。今でも不動尊の裏には、光慧和尚の名前が刻まれています。

 

この話は後に、江戸時代の戯作者である山東京伝が、寛政元年(1789年)に『三河島御不動記』として黄表紙本(今の絵本)を板行(版木で印刷して発行する)するに至りました。
その後、袈裟塚は、明治29年(1898年)に、現在の三峰神社内に移されたのです。

 

「袈裟塚耳無不動尊」の縁起。

三峰神社のお稲荷さん。

***
いかがでしたか?
次回も、顔にまつわるご利益のある神社仏閣をご紹介します。

 


今回、ご紹介したのは・・・
三峰神社・袈裟塚耳無不動尊
ご利益/耳の病
所在地:東京都荒川区荒川3-22
*東京メトロ日比谷線「三ノ輪」駅より、徒歩7分


 

いくら
人相研究・占術家。セツモードセミナー修了。顔学会会員。観相術(人相・手相など)四柱推命を主に扱う。喫茶店やファミレスなどで対面鑑定を行う傍ら、セミナー講師、Web・雑誌の記事の執筆・監修など、多岐に渡り活動している。

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