さる5月26日、不食で有名なインドのヨガ行者のプララド・ジャニさんが、老衰で亡くなられました。
ジャニさんは水さえ飲まないブレサリアンだったそうですが、この数年、メディアでも注目されていたため、印象的な風貌をご存知の方も多いことでしょう。
白髪の長い髪と髭に、ぱっちりと見開かれた目。その目は、ここではない別の世界を見ているかのような恍惚感を漂わせてもいました。
女神の祝福を受けて水も飲まず排泄もしなくなった
ご本人によれば、1929年8月13日生まれとのことで、享年90歳。
普段、ジャニさんは洞窟に住んで瞑想する生活を送り、午前中と夕方は彼を慕ってやってくる信者に拝まれ、日曜日や特別な日は、彼のもとへとやってくる大勢の人たちの相談に乗ってあげていたそうです。
彼が世界的に有名になったのは、生涯のほとんどの時間を「飲まず食わず」で生き続けたことからでした。
AFPの取材に対して、「子どもの頃(8歳)に女神の祝福を受け、口蓋の穴から得た不老長寿の霊薬により、食べ物や水がなくても暮らしていけるようになった」と話したそうです。
彼の主張は、インド医学会の関心を引きました。
インドの医師ら400人以上からなる学会(DISPAS)でも話題となり、研究団は2003年11月、10日間にわたって彼の体を精密検査したのです。
それは心臓病学者や神経学者、神経外科、消化器病学者など、各分野の専門家によって調べられ、24時間監視カメラで注視され続けるという徹底的なもの。
血液検査から脳のスキャンまで、ありとあらゆる内科検査をした結果、どれもまったく異常がなかったのです。
ただ、その中でとても興味深い発見があったらしく、一つ目は、一切の排泄がなかったこと。
二つ目は、尿が体外に排泄されず、再び膀胱壁に再吸収されていたこと。
驚いた専門家は「信じられない、 彼の存在自体が“高濃度の尿毒性排泄物そのもの”ということになります」と述べたそうです。
検査を終えた彼は、記者団の取材にこう語りました。
「私は口蓋の穴から不老不死の薬を得ることができる。それがあれば、私には水も食料もいらない」。
そして、静かに住まいの洞窟に帰って行ったのです。
もしジャニさんの発言が本当であれば、彼は80年以上も「不食」で生きながらえたということになりますね。
世界的な不食者と言えばジャスムヒーンさん
不食者と言えば、日本ではオーストラリア在住のジャスムヒーンさんが有名です。彼女に実際お会いすると、エネルギッシュで自愛に満ちたパワーに圧倒されます!
『神々の食べ物』
ジャスムヒーン著/鈴木里美訳/ナチュラルスピリット
ジャスムヒーンさんしかり、不食者は空気中のプラーナから滋養を得ているとされ、プラーナにははかりしれないパワーが宿されていることは間違いありません。
そして、ジャニさんももちろんプラーナを食していたのでしょう。
でも、他にも何か秘訣(?)がなかったのだろうか・・・。
そんなことを思いながら、ジャニさんと不食の関係を、日本の不食者の言葉をヒントに、ゆる〜く探ってみたいと思います。
日本の不食者の先駆けは山田鷹夫さん
ま〜、今でこそ「不食」は、世間にもそれなりに浸透しているとは感じますが・・・。
私の記憶では、2004年に発売された山田鷹夫さんの『不食−人は食べなくても生きられる−』(三五館)を読んで、初めて「不食」という言葉を知りました。
それまでは「断食」という概念しか知る由もなく、断食とは限定された期間だけ「食を断つ」ものでした。例えば、断食道場にいる間は食べなくても、それが終われば元の食生活に戻れるわけ。
しかし、「不食」とは読んで字のごとく、「食べない」という意味です。
果たして人間にそんなことって可能なんだろうか?
同書が発売された当時はかなりの衝撃の話題作で、大手の新聞広告でも何度か宣伝され、2年間で10刷くらいまで増刷されたような記憶があります。
「不食」という言葉を世間に認知させた山田さんの功績は大きく、その後、『StarPeople 47号』の不食特集で取材させていただいたのは懐かしい想い出です。
山田さんは、こういうことをお話されていました。
「不食は誰でも可能だと思います。大気中にある無限の元素を、皮膚が吸収するであろうからです。大気中には、きっと人間が生きるのに必要なエネルギーがふんだんにあるんだと思う。
今後は、尿の世界の素晴らしさを探っていきたいですね」。
不食と腸能力の関係とは?
山田さんの同書がブレイクした頃、たまたま森美智代さんの存在も知りました。
彼女は1日に青汁1杯(約50キロカロリー)とサプリメントだけの摂取で、すでに20数年も生き続けている大阪の鍼灸師。数多くの著書もあり、映画にもなったので、ご存知の方も多いでしょう。
森さんも、ある種の不食者と言えるでしょう。彼女への検査依頼も多く、理化学研究所を始めとして、医学的な研究対象にもなっています。
かつて森さんを取材した際の興味深い言葉を、今でもよ〜く覚えています。
「私の腸内細菌を研究した先生から教えてもらったんですけどね。私の腸内環境って、牛みたいなんですって!」
「え?」
さてと。
ここで、牛を例に不食の説明させてください。
牛は反芻動物です。反芻とは、「一度飲み下した食物を口の中に戻し、噛み直して再び飲み込むこと」。
牛には4つの胃があります。●飲み下した食物はまず、反芻の中心的な役割を担う「第1胃」に送られる。ここで食物と唾液が混ぜ合わされ、微生物によって発酵し、「短期脂肪酸」が生成される。
*牛の唾液は、血液中に含まれる尿素を再利用して作られる。その唾液は窒素を含み、胃の中でタンパク質の合成を可能にする。●その発酵物は「第2胃」にまで送られた後、口腔に戻され、再び咀嚼され、唾液と混ぜられた後に飲み下される。
●その発酵物は「第3胃」にまで送られ、ここでさらに発酵して「第4胃」に移る。
●「第4胃」では、「第1胃」で微生物が分解しなかった炭水化物、タンパク質、脂質などが消化される。その消化物を含む発酵物は、次に小腸に送られる。
このサイクルが1日に10回ほど行われ、これに10時間を費やすという。
つまり、カンタンに説明すると、こういうことなんです。
●牛は、消化管内に「常在微生物」を持つことで、草という限られた食料から必要な栄養を最大限に取得できる。
●「常在微生物」は、タンパク質やビタミンなどの栄養素や、エネルギー源の生産工場であり、牛が食べる草は食料というよりも「栄養素生産工場の燃料」みたいなもの。
●人間の大腸にも細菌などの微生物が存在し、食物中の繊維質の5%程度を分解するらしいが、牛は驚くなかれ、50〜80%も分解するのだとか!
もしかして、森さんは飲んでいる青汁に含まれる栄養素以上のものを、腸内細菌の「栄養素生産工場」から得ているのではないでしょうか!?
そういえば、先の不食者のジャニさんの検査結果報告には、「彼の尿が外に排泄されずに、再び膀胱壁に再吸収されていたことが確認された」とあります。
それと似ていて、牛の反芻のしくみも、普通は捨ててしまう体内の尿素を、唾液として再利用し、タンパク質の合成に役立てていますしね。
人は食べなくても飲まなくても生きられる
不食の秘密のひとつは、もしかすると腸にあるのかも知れません。「超能力」という言葉も、もとは「腸能力」だったのかな(笑)。
それにしても、ジャニさんは水も飲まなかったのだとか!
いや、厳密に言うならば、水分は摂っているはず。だって、大氣中にも微量ながら水分が含まれているんですからね(笑)。
かつて取材した山田鷹男さん、森美智代さん、秋山佳胤さんとも、水分は摂取していたことを知りました。
世界的に有名な不食者のジャスムヒーンさんにしても、たまにコーヒーを嗜まれていました。元は「コーヒー豆」という固形物が粉になって濾過されたものがコーヒーだから、厳密に言うならば、間接的にコーヒー豆を食べていることになるんでしょうかね(笑)。
森さんが常飲している青汁も、元は緑黄色野菜であって、それが飲料という液体に変化したものですよね。
そう考えると、そもそも「不食」の定義って、なんと説明したらいいのかっていうことになります。
ま〜、人類が食欲から解放されれば、どれだけ地球に貢献できるでしょうか!
そこが大事ですね。
昨年、ジャスムヒーンさんがナチュラルスピリットのワークショップで、こう話されていたことが特に印象的でした。
「近い将来、私たちは液体だけで生きるようになります。だから、食べたい人は今のうちに食べておいてくださいね(笑)」。
このたび亡くなられたジャニさんや不食者たちの生き様は、いろいろな意味で人類に氣づきを促してくれているのでしょう!
そんなことを考えながら、彼の恍惚感に満ちたまなざしを思い出すのでした。
ララド・ジャニさんのご冥福を、心よりお祈り申し上げます。
(この記事を書いた人)
丹波-浪速道(たんばなにわどう)/元ナチュラルスピリット社の関西支局担当者として、営業・取材・編集などに6年間従事。丹波~浪速の(京都~大阪を主軸とした)近畿圏の霊ラインを活性化させて、伊勢~白山の霊ラインにからませた霊ラインの十字架をつくることで、日本人の意識の目醒めを促進。1986年、アメリカ大陸を101日かけて自転車横断達成。生まれながらの冒険野郎。次なる夢は、地球の地底世界に移住すること。
『統合リセット』
ジャスムヒーン著/エリコ・ロウ訳/ナチュラルスピリット
『リヴィング・オン・ライト』(改訂新版)
ジャスムヒーン著/埴原由美訳/ナチュラルスピリット