先日、興味深い一冊の書籍を読む機会に恵まれた。それが『輝く人生を送るためのスピリチュアルガイドブック 精神世界の歩き方』(BABジャパン)。
同書に魅かれた理由は、著者が小笠原英晃さんだったからだ。
2016年の冬、弊社の季刊誌『Star People 61号』で龍の特集が組まれた時、記事を寄稿していただいたのも小笠原さんだった。

天才・五井野正博士を描いたベテラン・ライターの足跡

ちょうど同じ頃、書店で一際目を引く新刊が棚に積まれていた。そのタイトルは、『天才 五井野正博士だけが知っているこの世の重大な真実』(ヒカルランド)。
あの五井野博士にまつわる本が出版されたことに、感慨深い思いを抱いた。そして、同書の著者も小笠原さんだった。

五井野博士は2013年に、『今、知らなければいけない重大な真実を語るメジャーな人々』(ヒカルランド)で共著本も出版されたが、原発マフィアや某宗教団体などから圧力や妨害、誹謗中傷を受け、惜しくも2017年秋に故人となられている。

世界の要人たちの間ではつとに有名な方だったのだが、日本の大手マスメディアから抹殺され続け、不遇のまま人生にピリオドを打たざるを得なかった。
真実の語り部として歩んだ博士の人生は、まさに茨の道であったのだろう。

それにしても、そのような偉大な人物の生涯を絶妙なタッチで描いた小笠原さん自身の本とは、どのような内容なのだろうか?

本書では、小笠原さんが出版業界の「精神世界」という分野を歩み続けてきた30年に及ぶ人生の集大成が、コンパクトにまとめられている。
これまでに取材したスピリチュアルな領域における国内外の著名人や研究者は、のべ500名以上に及び、精神世界〜ホリスティック・自然療法〜自然科学・ニューサイエンス〜心理〜身体〜ネイチャーなど、広範囲にわたっている。

そうやって得たのが、セラピーやヒーリング、瞑想法をはじめとした癒しや、スピリチュアリティにまつわる膨大な知識。
それらが「スピリチュアリティ」「自然・宇宙」「愛」「ハートのちから」などの章に分けられ、凝縮されている本書は「精神世界」を学んでみたいという、いわゆる初心者向けの格好のガイドブックだとも言える。

自分自身、ライターとして多くの人々を取材してきたただけに、個人的な関心もあって、とても参考になったし、同業者には特にオススメできる一冊だと感じた。

30年かけて辿り着いた”ハートのちから”

本を読む目的は人それぞれだと思うが、自分が本書に対して最も関心のあったことは、これだけのキャリアを積んだ大ベテランが30年後に感じた境地とは何だったのか?
「精神世界」に関わり続けて、垣間見えたものとは何なのか?
ということだった。
そんな思いを抱きながら読み進めていたら、本書の「おわりに」の章で、たま出版社の創業者の瓜谷侑広さんの発言が引用されていた。

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はたして瓜谷氏が描いていた精神世界のゆくえはどのようなものだったのでしょうか!? 今から30年以上も前に、瓜谷氏はこんな言葉を残しています。

「精神世界は波動の世界であり、一人の目覚めた人の波動が、同じ他の人の波動を呼んで自然に相い寄る魂となって集まってくる。
(中略)
そうしていつの間にか、そういう人々の集団、あるいは社会が、その精神世界にふさわしい変革を遂げてゆくのだ。そのムーブメントがついに動き出したのである」。

(たま出版刊『深層自己の発見』より)
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確かに、そのムーブメントは動いているのだと思う。
そう感じた理由は、ナチュラルスピリットを代表する永遠のロングセラー『波動の法則』(足立郁朗著)が、ここ数ヵ月間、衰えることなく売れ続けている現象にも表れていると思えたからだ。

そして、同章には自分が探し求めていた答えを、以下の引用から見つけることができたのだった。

「自分の意識が変われば世界は変わる!」という精神世界のエッセンスについて、実体験を通して気づいた人たちが確実に増えている。
これまでのように、大衆の注目を集めるスピ系の突出したパフォーマーではなく、今後、普通の人々による霊的な覚醒意識(聖なる気づき)のシェアリングによって、チーム意識が芽生えてくれば、日本にも瓜谷氏のいう大きな精神の変革に繋がるムーブメントが起きるかもしれません。
(中略)
もちろん、それをもたらすのは、氾濫するコピペ情報や知識の多寡ではなく、一人ひとりの体験を通した実証作業であり、”ハートのちから”にほかなりません。
これが30年間、精神世界の旅を続けてきた僕なりの結論です。
(『精神世界の歩き方』より)

「マインド」から「ハート」へ

なるほど! 小笠原さんが30年かけて辿り着いた着地点、それは”ハートのちから”だったのか。
そのことを説明しているのが、本書の「ハートのちから」の章。実に興味深い内容なので、後ほど述べたいと思う。

ところで、「ハート」とよく対比されるのが、「マインド」だ。「マインド」は3次元で学んだ情報から考えていること、「ハート」は直観やひらめきから感じ取ることだとされる。

これに関連して、何年か前のこんな話を思い出した。
何人もの不良学生たちを自身の私塾で預かり弟子として育てながら、全員を立派な会社の社長に育て上げたことで有名な、名伯楽の会社経営者がいた。
その方の講演を聴いた時、最も印象深い話が以下のものだった。

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直感とは「ひらめき」ともいえます。僕もさまざまな人生経験をしましたが、考えて行動したことはほぼ失敗し、意味もよくわからないまま直感に従って行動したことはほぼ成功しました。
(中略)
僕の場合、最初に「ひらめき」があって、次にその理由を考え続けます。
「天の意思」を「わが意思」に沿うように探り続けてきたのが、僕のいままでの人生です。そこには僕個人の意思はなく、「他力の中に自力が存在する」という概念です。
僕が自分の意思で物事を判断することはまずなくて、常に天にお伺いを立てます。

「天の意思」は常に現象として現れますので、「天の意思」に反する場合は必ずつまずきますし、沿っているならスムーズに物事は進んでいきますね。
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この経営者の方は、数々の失敗経験から無意識のうちに、”ハートのちから”で生きる術を学び取っていたといえないだろうか。

精神世界の案内人がいざなう”ハートのちから”考

そんな”ハートのちから”に関して、本書では一章をさいて説明されている。
最近はハート(心臓)の研究がかなり進んでいるらしい。
生物で一番最初にできあがる器官は何かというと、心臓だ。脳は心臓ができてから、約4ヵ月後にできるという。

心臓には4万個ものニューロンが存在し、ホルモンや神経伝達物質、脈拍や血圧をモニターしている。この小さな脳である心臓が、脳や他の臓器を動かし始める。
心臓の小さな脳は神経系を通して大脳とつながっていて、相互に情報のやりとりを行っている。
心臓移植を受けた人が移植後に嗜好が変わり、好きな食べ物が変化したという事例を聞いたことがあるが、それは移植された心臓の持ち主の嗜好と同じになるからだそうだ。

心臓が伝達するメッセージによって、大脳の機能が大きく変化することもわかってきているらしい。
感情の状態が心拍数に影響し、大脳へのメッセージとなるそうで、この心拍数が規則正しく整っている状態を「コヒーランス」と呼ぶそうだ。

そして、ここが重要なポイントだと思われるのだが、この「コヒーランス」の状態の時、人は明晰で意思決定が正確で、生産性も高く、創造性も高まるのだという。

これらの研究結果を知ってしまうと、「ハート」についてもっと知りたいという氣になってくる。
そういえば、ナチュスピでも「ハート」をテーマにした書籍が何冊かあり、その代表作といえば『ハートの聖なる空間へ』(ドランヴァロ・メルギゼデク著)だろう。

『ハートの聖なる空間へ』
ドランヴァロ・メルギゼデク著/鈴木真佐子訳/ナチュラルスピリット
本体2,300円+税

『精神世界の歩き方』の書評の最後が「ハート」の話で終わることになるなんて、予想もしていなかった(笑)。
「ハート」の重要性を改めて知らしめてくれたこの本に感謝するとともに、『ハートの聖なる空間へ』をもう一度、じっくりと読み返してみるとするかな。

(この記事を書いた人/丹波-浪速道

『精神世界の歩き方
小笠原英晃著/BABジャパン
本体1,600円+税