第二の人生こそ、本当の人生であることを提唱する、ナチュスピの書籍『上方への落下』(リチャード・ロール著)は、様々な場所で思わぬ反響を呼んでいるようだ。
今回、ご紹介する本もその一つ。
「倭姫命」からのご神託で自らの道のりを本に
さる2月、出版社の風雲舎さんから新刊案内のメルマガが届いた。同社は、ここ数年、スピ系書籍のベストセラーを連発している大人氣ヒーラーの並木良和さんのデビュー作、『ほら起きて! 目醒まし時計が鳴ってるよ』を世に出した出版社だ。
今度はどんな新刊が出るのかと思いきや、なんと、本のタイトルが『落ちる!』(新谷直慧著)。何か心にひっかかるものがあり、興味が湧いたが、そこにはこんな説明が書かれていた。
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「落ちる!」なんていうタイトルは、縁起のいいものではありません。そんなタイトル見たことがない、幸先が良くない、などと社内で抵抗がありました。
でも著者のたっての意向です。深いわけがあったのです。
著者は新谷直慧さん。新谷さんは、ぼくが風雲舎を興して以来の戦友、編集者を兼ねた腕の立つライターです。(中略)
その後彼女は、大きな波動を投げかける人物の書物を次々に出版し、いわゆるスピ系世界の動きをじっと見つめてきました。
そんな新谷さんのもとに2020年の初めごろ、「自分の本を書きなさい」というお告げが届きます。ある神さまからのメッセージでした。
え、自分のこと? 他人様のことを書くライターが自分のことを書く? 逡巡しながら、結局書かざるを得なくなりました。それがこの本です。
風雲斎のひとりごと No.88(2021.2.23)より
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著者の新谷さんは、ベテランの女性編集者兼ライター。女子短大を卒業後、銀行系のシンクタンクへ。
その後、紆余曲折を経て『レジャーアサヒ』の編集者として、出版界での人生をスタートさせる。
自身が手がけた本が大きな反響を呼び、書籍の役割を再認識したことがきっかけとなって、36歳で編集制作会社を立ち上げ、独立。
日本経済はバブルの最盛期で、多忙を極める日々。経営は順調だったが、時折、脳裏をかすめる空虚な思い。
ふと独立したときの動機を思い出し、「この世に必要な本を作りたい」という原点に沿ったプロジェクトが始動したものの、1週間で頓挫。
一度は仕事を諦めかけた矢先、たまたま誘われた天外伺朗氏の講演会が縁で、時代の先端を行くスピリチュアルな視点を持った錚々たる人たちとの出会いに導かれ、ゴーストライターという道へ。
56歳で会社をたたみ、現在はフリーランスとして出版企画、編集、トークイベントやセミナーなどのコーディネーターとしても活躍されている。
『上方への落下』に心動かされ、「落ちる」ことで新たな道が
本書は、著者が独立してからフリーになるまでの20年間の人生の途上での、悲喜こもごもの体験談がメインだ。
友人を介して、倭姫命から「あなた自身の本を書きなさい」とのメッセージが降りたのは、2020年の初め頃。
しかしながら、自分の書くものが誰かの役に立つとも思えず、筆も進まない。
それでもなんとか大方の原稿を書き終えた2020年8月末、猛暑の頃のこと、書店で“偶然に手に取ったある本”に書かれていた言葉が、彼女の心を突き刺したのだ!
そこには『人生には二つの旅がある』と書かれていました。
一つの旅は、あなたの人生を充実させ、完成させるもの。
もう一つの旅は、そこから降りることでスタートするもの。
後者は、これまでなかった方法で、人生をまったく別の熟成に導くものだと言います。
本のタイトルは『上方への落下』(ナチュラルスピリット)。著者はメキシコに住むフランチェスコ会の神父さま、リチャード・ロール氏。原稿を書きながらも確信をもてないでいた私のテーマが、そのとき、まさにそこにあることに気づいたのです。課題は自分から選べるものではなく、向こうからやってくる──と著者はいうのですが、事実、私のテーマは向こうからやってきました。
(『落ちる!』はじめにより)
『上方への落下』
リチャード・ロール著/ナチュラルスピリット
本体1,800円+税
『落ちる!』を読んでいると、著者が仕事をする中でチャンスを掴み、時に信頼していた人から裏切られたり、ハラハラするようなピンチに遭遇したり、引き込まれるようなストーリーが展開していく。
果ては、親の介護に自らの発病など、突然のアクシデントで方向転換を迫られ、落胆し、戸惑ったり悩んだりする著者の心模様が、克明に描写されている。
こういうことは、誰の人生にも起こり得ることではなかろうか?
“隣の芝生は青い”という諺がある。何でも他人のものはよく見えるものである、という意味だが、人は誰でも大なり小なり悩みを背負って生きている。
しかしながら、著者の場合、どんなにピンチが訪れても、結果的には“禍転じて福となす”で乗り越えているのがすごいところだ。
結局、受けけ入れるしかありません。それが二度、三度と続くと、受容できるようになり、そこから始まるであろうストーリーを心のどこかで楽しみにするようになりました。
そのコツは、たった一つ、「いいことなのか、悪いことなのか判断せず」に、「受け入れる」でした。それが最悪の「落ちる」出来事であっても、起きたことをただただ受け入れていく。そうしていくと、やがて新たな道が開けることを知りました。ですから行き詰まると、やってくるものをただ待つようになりました。ただじっと待つのです。ですから、やってきた瞬間「これだ」と直感でわかります。」
(『落ちる!』はじめにより)
真っ逆さまの落下は飛翔への始まり
「落ちる」ことに光明を見出した著者の体験は、絶望的な状況にあっても希望を抱かせてくれる。
中でもロッキー山脈でのヘリコプタースキーで起きた絶体絶命の危機から脱却したことが、その後の人生観を大きく揺るがすこととなった。
通常、私たちはいろいろな意味で「落ちる」ことを避けようとします。とりわけ「真っ逆さまに落ちる」ほど、危険なことはありません。
けれど、落ちることによって始まることがあることを、私はロッキーのスキーツアーで体験したのです。落ちるとは、私にとってまさに飛ぶ体験だったのです。
真っ白な雪山の中で暮らした十日間の時空間を、私はそのあと何度も思い出し、それを自分の心の宝物にしていました。(本文より)
今、苦しい状況の中で生きざるを得ないことは、「落ちる」ことと同じだ。そして、「真っ逆さまに落ちる」とは、「自分の命を断つ」ことと同じだ。
だけども、落ちることによって始まることがあるのだと、著者は言う。落下は飛翔なのだと──。
いまだコロナ禍収束の兆しが感じられないこのタイミングで発売された、『落ちる!』。
本書を読み終わって、改めて自分自身に問いかけてみた。
昨年から始まった、コロナパンデミック。
日本国内では昨年1年間の自殺者が全国で2万1000人を超え、2009年以来の増加に転じ、女性が15%も増加したほか、高校生までの児童・生徒では過去最多らしい。
新型コロナウイルスによる社会不安の高まりが影響していることは、間違いないだろう。コロナ問題が社会に与えている経済的ダメージは相当に大きく、これによって悩み苦しんでいる人たちがどれだけいることだろうか?
人生で悩み苦しみを抱えている方々ももちろんだが、特にコロナ問題で深刻な難題を抱えることになった方々には特に読んでいただきたい。
きっと、何がしかの生きるヒントを見つけられるだろう!
(この記事を書いた人/丹波-浪速道)
『落ちるー そこから第二の人生が始まったー』
新谷直慧著/風雲舎
本体1,500円+税