2020年に入り、まったく予期せぬ出来事の発生によって、日本も世界も騒然としてきた。その出来事とは、中国、湖北省の武漢市を中心に拡大している新型コロナウイルスの蔓延である。
この記事を書いている2月19日現在で、中国を中心に世界で7万3519人が感染し、2009人が死亡した。
新型コロナウイルスという「ブラックスワン」はどう転ぶか
感染者のうち回復したのは14529人だ。致死率は2.67%、回復率は19.32%となっている。
ちなみに日本ではクルーザーの「ダイヤモンド・プリンセス」の感染拡大があるため、感染者は616人、死亡1名と、中国に次いで世界第2位の感染者数だ。
また致死率は、2003年に中国を中心に蔓延した「SARS」の9.6%、2012年にサウジアラビアなど中東を中心に席巻した「MERS」の34%、そして1976年に発見され、2014年までにアフリカ大陸の中部から西部で数回蔓延した「エボラ出血熱」の59%~89%に比べると、今回の新型コロナウイルスは2.67%と低い。
ちなみにインフルエンザの平均致死率は0.1%なので、これよりは高いものの、さほど恐れる必要はないのではないかとの見方もある。
しかし今回の新型コロナウイルスは、感染力が非常に強いこと、特効薬がまだないこと、感染源が特定できない患者が多いことなどの理由で、恐れられている。特に海外のメディアでは、新型コロナウイルスの変異のスピードが早く、すでにさらに毒性の強まった新型に変異したという報告もある。
新型コロナウイルスの蔓延が、経済にもたらす影響も甚大だ。日本は10月から12月期のGDP成長率はマイナス1.63%、年率換算ではマイナス6.3%と大きく落ち込んだ。
これは新型コロナウイルス蔓延以前の数値で、消費税の増税、そして米中貿易戦争の余波が原因で落ち込んだものだが、これに今回のウイルス蔓延の影響が加わると、日本経済への影響には計り知れないものがある。
世界や社会の大きな変化を引き起こす、誰も予期しないい突発的な出来事を「ブラックスワン」と呼ぶ。
これは、突然変異で出現するめったにいない「黒いスワン」にちなんでつけられた名称だ。2007年から2008年の金融危機、2011年の東日本大震災と福島第一原発の放射能漏れなどが、最近の例だ。
今回の新型コロナウイルスは、まさにこのブラックスワンである。3月や4月くらいの早い時期に蔓延が終息するなら、経済のリバウンドもあり、影響は比較的に小さい。
しかし、もし蔓延が夏を過ぎて続くなら、特にその経済的な影響は、予想を越えて深刻になる恐れがある。世界経済は不況へと突入し、日本も大変な状況になるだろう。
クレイグ・ハミルトンが指摘する「ブラックスワン」
このように、2020年は日本にとって厳しい年になる可能性が高い。
新型コロナウイルスの蔓延が長引いた場合、オリンピックの開催にも問題が出てくるはずだ。これも予期しない出来事だ。