著者はある時、ビーチへ行き海にもぐって楽しんでいた。シュノーケルを使って1時間ほど泳いでいたが、海から上がるとポケットに入れていた鍵がないことに気づいた。
ポケットに入れていた鍵束には、車の鍵や滞在していた部屋の鍵もついていたのだ。
思考の力はなぜ奇跡を起こすのか
青くなった著者は、自分が泳いでいたあたりをすぐに探し始めた。彼が泳いでいたのは約12メートル四方の範囲で、色とりどりの珊瑚が生息する深さ3〜4メートルのあたり。
1時間探したが見つからず、周りはだんだん暗くなり始めた。近くでシュノーケルを楽しんでいる父親と息子たちがいた。直感が働いたらしい彼は、彼らに「海底で何か見つけませんでしたか?」と聞いた。
すると、一番幼い子供が彼の鍵を差し出した。
序章で語られるこのハプニングから、本文は始まっていく。
「思考と現実をつなぐ鎖」。これを、これから科学的な根拠を示しながら説明していこうとするのだ。いやがうえに期待は高まる。
エネルギーフィールドで分子や遺伝子の構造を変えるということは、例えば、悪性腫瘍に悩まされている患者さんがなんらかのエネルギーワークで、腫瘍がなくなったということの理由にあげられたりする。
さてその時、このエネルギーフィールドでは何が起きているのか。
この本で述べられているのは、このときのエネルギーフィールドの科学的な解説である。
細胞が再生する際に自身の肉体から発せられるエネルギーフィールドで、その新細胞の質は左右されるという。そしてそのエネルギーが、その人の愛や感謝や寛容という生き生きと、そして一貫性のある脳から放たれる周波数で包まれていたら、そういうポジディブなエネルギーフィールドで細胞が育つというのだ。それを、各種多様な実験から導き出している。
科学と精神世界(スピリチュアル)という2つのポジションに別けてみたとき、スピリチュアルのポジションから見た時には非常に興味深く、きっと日々の生活に自信と力強さが生まれてくると思う。
反対に科学のポジションから見た場合には、物足りなさを感じるであろう。
量子力学の世界は「観察者効果」(とても簡単に言ってしまうと、測定値は観察者の影響を受けるということ)という言葉があるくらい、科学とスピリチュアルのテリトリは近づき、その境は漠然としている。
しかし、スピリチュアルは経験が物をいう世界であり、主観の世界でもある(人間を通したものはすべて主観といわれればそのとおりだし、また反対に、主観も客観も分離から始まるというのは言わないことにして)。
凡人である私は、是が非でも科学側ポジションの人に実験と哲学で解き明かしてほしいのだ。
違う土俵の二つの巨頭が宇宙の果てと自分の細胞のミクロの世界の中で出会って、「わたしだったのね」と同時に一つの思念を発したら、それは本当にロマンだからだ。
ところで、冒頭の鍵が見つかった科学的なからくりとでもいいましょうか、その説明は、私にとってはあまりにも薄味すぎてしまいましたが、興味のある方にはわくわくするでしょう。
(この記事を書いた人/東村山キヨ)
『思考が物質に変わる時』
脳科学、エピジェネティクス、心理学、量子物理学で解明された「思考の力」
ドーソン・チャーチ著/工藤 玄惠、島津公美訳/ダイヤモンド社