去る8月、東京・渋谷で、SITHホ・オポノポノをテーマにしたトークイベント「自分に嘘はつかない、粋な生き方」が開催されました。ゲストは、吉本ばななさん、平良ベティさん(写真左)、平良アイリーンさん(写真右)のお三方。
終始Q&Aセッション形式で進められたこのイベントの模様をお届けしましょう。
平良アイリーンさんからの質問に対し、ゲストのお二人がSITHホ・オポノポノの考え方や実践法などのエピソードを交えて語り合います。
※本文は講演内容を部分抜粋して構成しています。

質問1
自分に嘘をつかない生き方とは?

アイリーンさん(以下、アイリーン) これまでの人生の中で、「自分に嘘をついているな」と感じたり、「これからはもう、自分に嘘はつきたくない」と強く決意したエピソードがあったら教えてください。

 

「10年かけて、生き方を変えるためのプランを実践しました」(ばなな)

吉本ばななさん(以下、ばなな) この素敵な本(新著『ウニヒピリのおしゃべり』(講談社)を掲げながら)にも書いている話なんですけど(笑)。
ある時、このまま小説家のやり方というか、書き方というか、生き方というか、職業としての小説家の生き方を続けていくのは「無理だな」と思った時がありました。そこから10年かけて、すべてを変えるように実行してきたんです。

10年って結構長くて、途中で何回も「やっぱり前のスタイルが楽かな」と思った時もありました。特に経済的に困窮したときは、「これはやっぱり、やり方が間違っているのかな」とも思ったんですけど、結果的には間違ってはいなかったんです。
ですから、「何かを叶えようとすると試練がある」というのは、実は試練じゃなくて「過程」なんだと思いますね。

もっと具体的に申しますと、本を作る作業というのは(プロセスが)決まっているんですね。原稿を書く、ゲラが出る、本になる、打ち合わせをする、打ち上げする、書店に本が並ぶ、サイン会、みたいに。
そしてある時、刷り上がった本の見本を受け取った時に、「ああ、また本が出たな」と(機械的に)思っちゃったんですね。
その時、「こういう生き方はよくないな」って思いました。「次は出せないかもって思うくらいの気持ちがないとダメになっちゃうな、書く気持ちもダメになっちゃうな」と思ったんです。

その頃、ちょうど森博嗣(もりひろし)先生(※1)に出会ったんです。

※1:森博嗣
小説家、工学博士。1996年、『すべてがFになる』(講談社文庫)で第1回メフィスト賞を受賞し、作家デビュー。

森先生は、作家がやることをひとつもやらないで、なんとかしちゃうんです。
例えば、サイン会はしないで名刺を交換するとか、印税は受け取らないで印税分のお金で好きな人たちに本を配ったり。自分の好きな人は少ししかいないから、送りたい人を募集して(『STAR EGG 星の玉子さま』森博嗣著/文藝春秋)を1000冊とか配ったり、いろんな実験をされていたわけです。

森先生は名古屋大学の助教授をされていましたが、ご本人は(大学勤めは)「辞めたい」と思っていたそうです。でも、ご両親にとっては、名古屋大助教授というのはすごい(名誉な)地位なのだそうで。
ですから、親が他界したら大学を辞めて、外国にも行って、庭で思う存分鉄道を作って、その間に執筆もしようと決めて、彼もやはり10年かけて、そのプランを全部実現させたんですね。

ですから、「森先生にできるなら私にもできるはずだ」と思って、事務所をたたんで、自分でメディアを作って、ちゃんと生きていけるように、だけど書くことは辞めなくて済むようにと、すごく努力しました。

その間、一番キツかったのは、(周囲の)人の目でした。「そんなことしちゃって大丈夫?」っていうのもあったし、編集の人たちの「今までのようにやろうよ」っていう空気だったり。
もし、日本人特有の「空気を読む」をあの時私がやっていたら、きっと以前と同じ(違和感のある)ことを続けていたと思いますね。
(型にはまった)日本的な仕事のスタイルから離れていくのは、本当に大変でした。
「作家の仕事って、こういうものだ」
「みんなもこうやっているんだ」
「こうやってみんなでこの業界を回しているんだ」
「だから自分は抜けちゃいけないんだ」
こう自分に言い聞かせてきたことが、私にとっては「自分に嘘をつくこと」だったわけです。

私が自分に正直に生きることを決心できたのは、森先生と出会えたおかげです。同じように私(の生き方)を見て、誰かがもし、自分に正直になることを決心してくれたらいいな、と思いますね。

アイリーン ありがとうございます。私は、ばななさんのそういう姿を見て、いつも(自分に正直に生きることに)挑戦しています。

ばなな 私はいつもアイリーンちゃんに愚痴ったり、ひどい目に合わせているだけです(笑)。

アイリーン いえいえ、本当に。ばななさんは口調とかドライな感じですけど、いつも愛があって、だからこそ、そこに向かっていけるのかなと思うんですよね。
私は台湾などもご一緒させてもらっているので、いろんな場所でのばななさんを見ていますけど、いつもブレないというか、変わらないですよね。

ばなな いえいえ、全然そんなことなくって、普通にパニックになりますよ。そういえば、ちょうど先日、海で息子や友人と泳いでいる時に面白いことが起こったんです。
背が立つか立たないかくらいの深さのところで、みんなで立ち泳ぎをしながら話していたら、大きなゴムボートに乗ったお父さんと小学生くらいの息子さんが来たんです。そうしたら別に波も何もないのに、ボートが転覆して二人が海に放り出されたんですね。お父さんが急に「助けてください」ってパニックになって(笑)。最初、ふざけてるのかなって思ったんです。でも、本当にパニックになっていて。
周囲からすると平気だろっていうことでも、本人たちにとってはそんなふうに思う余地がなかったんだなって、すごい考えさせられる体験でしたね。

平良ベティさん(以下、ベティ)きっと、お父さんの潜在意識の中にあった、海への怖れみたいなものが「現象化」したんでしょうね。

アイリーン そういえば、私も子どもの頃に家族で水上バイクに乗った際、母(ベティさん)が私と弟のことを心配するあまり、母のバイクがフェンスに激突しちゃったんですよね。

ベティ 自分の中にある怖れって、それが現実に投影されるとものすごいことが起きちゃう、そんな体験ですよね。
その後はおかげさまで、いろんなことを自分なりに「クリーニング」(※2)できたかなって思います。

※2:クリーニング
SITHホ・オポノポノでは、すべて身に起こることは自分の内から出たものであり、潜在意識をクリーニング(記憶の消去・整理等)することで、問題を解決する。

質問2
やりたいことがちゃんとできていない状況なら、どうする?

アイリーン 結婚・出産・転職などによって環境が変わることで、自分が本当にやりたいことから遠ざかってしまうことが現実にはあると思います。
そういう時、生活の変化をどのように受け入れて、ストレスをためないようにできますか?

 

「完ぺきにこなそうと思わず、このくらいでいいやっていう気の抜き方が大事」(ばなな)

ばなな 子ども・育児で言えば、何もかも完ぺきにこなそうと思わないこと。例えば、1回の食事で与えたい栄養素がいくつかあったとしても、それを1日3回の食事に分けて、トータルでバランスが取れればそれでいいわけですよね。無理して1回で完璧にする必要はないわけです。
ですから、「子どもがいるんだから、このくらいでいいや」っていう、いい意味での気の抜き方が大事なのではないかなと。

アイリーン それ、すごくわかりやすいですね、「これくらいでいいや」っていうマントラが自分の中にあれば、私ももう少し気持ちが楽になるんだろうな。

ばなな 私も育児中は思い切り小説が書けなくてつらかったですけど、でも、その時にしかできないことというのもやっぱりあったわけで、例えば小説を書くにしても、子どもがいながら書くような書き方とかは勉強になりました。
そういうのが将来、自分が年を取って、体がうまく動かなくなった時に活きてくるのかなって思ったりします。
そういうふうに思えれば、「まあ、今日は今日でよかったね」みたいな感じになるんじゃないのかな。

アイリーン 私はどうしても、子どもがいることで思うように仕事ができなくなると、ストレスを感じちゃうんですよね。

ベティ 私はアイリーンには、「いつもより2時間くらい早く起きて、自分だけの時間を作ればいいんじゃない?」って言っているんですけど、「子どもが寝ないから」っていう悪循環に入っちゃうみたいですね。
でも、他人に預けてでも自分の時間を取ることによって、アイリーンが穏やかな気持ちになれば、子どもはそのエネルギーを感じ取るから、子どもが起きるのが2時間、遅くなるのかもしれない。

アイリーン 確かにそうですね。今、時差ボケで、朝5時くらいに自然に目が覚めるんですけど。そうして静かな時間を過ごしていると、穏やかな気分になって、子どもが起きるのが遅かったり、穏やかな気分で1日を過ごせていますね。

あと私の場合、本当は計画するのが得意じゃないのに、計画しているつもりになってやっていると、全然その通りにならなくて、仕事量が倍になって返って来ることがあるんですよね。
だから、物事の「流れ」を読む達人のばななさんて、すごいなって思うんです。

ベティ ばななさんといると「流れ」って言葉がよく出てくるけど、何も期待しないで全部がうまくいくんだという、宇宙に対する深い信頼が感じられるんですよね。

ばなな それは本当にあると思いますね。私は「宇宙や自然以外、信頼できるものは何もない」と思っています。
ホ・オポノポノでいうところの「ウニヒピリ」(※3)とは、「自分の体」だと何となくとらえているんですけど。

※3:ウニヒピリ
「潜在意識下にいる内なる子ども」を意味し、幼い子供のように愛情を求め、自分の声を聞いて欲しい、存在に気づいて欲しいと願っているもう一人の自分、本当の自分。インナーチャイルド。

もちろん、それが正解とかじゃなくて、体というものが自分の中では一番自然に近いものだなと思っていて。だから、「体に任せていれば基本的に間違いはない」っていう信頼があるんですね。

(この記事を書いた人/宙アキラ)

 


吉本ばなな
1964年、東京生れ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。1987年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞し、デビュー。1988年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、1989(平成元)年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、『TUGUMI』で山本周五郎賞、1995年『アムリタ』で紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアでスカンノ賞、フェンディッシメ文学賞〈Under35〉、マスケラダルジェント賞、カプリ賞を受賞。近著に『吹上奇譚 第一話 ミミとこだち』『切なくそして幸せな、タピオカの夢』がある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた単行本も発売中。

平良アイリーン
1983年、東京生まれ。明治学院大学文学部卒業。2007年にホ・オポノポノと出会って以来、生活のあらゆる場面で実践中。現在はSITHホ・オポノポノ・アジア事務局広報担当として、日本をはじめアジア各国の講演会の際に講師に同伴し活動している。また、ヒューレン博士やKR女史のそばで学んだ自身の体験をシェアする講演活動を行う。著書に『ホ・オポノポノジャーニー ほんとうの自分を生きる旅』、吉本ばななさんとの最新刊共著『ウニヒピリのおしゃべり』(すべて講談社)がある。

平良ベティ
SITHホ・オポノポノ アジア事務局代表。日本、韓国、台湾、マレーシア、シンガポール、中国など、アジア諸国にて同クラスを運営し、日々クリーニングを実践している。

『ウニヒピリのおしゃべり』
ほんとうの自分を生きるってどんなこと?
吉本 ばなな、平良 アイリーン著/講談社
本体1800円+税