『今だからわかること』(I CAN SEE CLEARLY NOW)は、著者ウエイン・ダイアー氏が亡くなる前年の2015年に発行された回想録です。ダイアー氏は本が出版された後も精力的に活動されていたようなので、死期を意識しての自叙伝ではないと思われます。
しかし、何かを感じていたのでしょうか? この本には彼の不遇の幼少時代から、軍人時代、大学時代、2012年の脂の乗り切った晩年時代の活動まで、自身の身に起きたエピソードと、それにまつわるスピリチュアルな出来事の意味合いが、深遠かつ壮大なスケールであますところなく語られているのです。
人生とは何か? 生きることとは何か? どこに向かって行けばいいのか? その語り口は、「モチベーションの父」と呼ばれたごとく、どんな辛いことも前向きに捉えさせてくれる力強さが感じられ、まるで現代のスピリチュアル版アメリカン・ドリームを読んでいるかのよう。
今回はこの本の編集者に、イチオシポイントを紹介していただきました。

目を通すたびに高揚し、背中を押して励ましてくれる本

初めまして、西島恵と申します。先日、ナチュラル・スピリットから刊行されたウエイン・W・ダイアー氏の自叙伝『今だからわかること』の編集を担当させていただきました。本書について、私なりの感想を綴ってみたいと思います。

この本は心理学やスピリチュアルの分野で活躍した作家・ウエイン・W・ダイアーさんが人生を振り返り、『今だからわかること』という視点から自身の身に起こった出来事を紐解いた自叙伝です。
個人的なことを申せば、ウエインさんのお名前は存じ上げていたものの、それまで著書を拝読したことはなく(すみません)……、多数の本を出されている方なのでどこから手をつけていいのかわからない、という思いもあったのですが、「編集をお願いできませんか」とお声がけいただいたときに「これならウエインさんの人生の全体像がわかるし、最初の1冊としてちょうどいいかもしれない」と感じたことを覚えています。

『今だからわかること』
ウエイン・W・ダイアー著、采尾英理訳

物語は幼少期から始まり、学生時代や海軍時代のエピソード、父親との軋轢、「書く」ことへの思い、大学教授から作家への転身など、ウエインさんの人生の足取りが余すところなく詰め込まれています。
采尾英理さんの翻訳がとにかく素晴らしくて(本当に読みやすく、ウエインさんへの深い愛も感じました!)、いただいた原稿を読む段階からグイグイ引き込まれました。

いい本に触れたときはいつもそうなのですが、この本を読みながら「わ〜、なにこれ、やばい!」と興奮が止まらなくて。内側から力がみなぎってくるというか、ここには真実が書かれている、と静かに確信しました。編集者という立場上、本が完成するまでに何度も何度も目を通すわけですが、そのたびに力をいただく思いで、私自身、何度も励まされたんです。

常識ではなく、自分の感覚に従って生きるという思いは、去年の春に会社員を辞めて独立してからずっと心に抱いていて、今の私の唯一の指針といってもいいかもしれません。
それが正解かわからなくても、もう自分をごまかして生きたくないし、体や心が「NO!」というものはやりたくない。……酸いも甘いも味わい尽くした方からすれば戯言のように聞こえるかもしれませんが(笑)、少なくとも今の私はそれだけを指針にしていて、この本はそんな私を「それでいいんだよ」と後押ししてくれるようでした。

あのときの私にはわからなかったけど(わからない、というのがミソですね)、数年後に振り返ったとき、「あぁ、確かにあれが今につながっているな」と思う出来事が誰しもきっとあるはずで。
なぜか私は今ここにいて、いつかの夢を叶えている。その奇跡を偶然で終わらせず、意図的に叶えていくという心の在り方、意識の持ち方が本書には散りばめられています。

裏表紙の言葉に、彼の人生が凝縮されています。

余談ですが、本書の見本誌が届いたくらいのタイミングで、いまさらながらスティーブ・ジョブズのスピーチの動画を見たんです(例の、スタンフォード大学の卒業式の)。
号泣しながら、「おぉ、ジョブズも結局、『今だからわかること』について語っている!」と感動しました。とにかく点と点を繋ぐんだ、繋ぐしかないんだ。その心意気は、ふわっとゆるっと楽しいことだけやっていれば何でも叶うよ、というスピリチュアルの一側面とは違った強さがあるけれど、私はそういう確固としたエゴも必要だよな、と思うし、ウエインさんもそういう思いは持っていた気がするな。

今がどれだけつらくても、描いていた現実と違っていても、自分の心さえゆがめずにいられれば、五年後、十年後、きっと「あ、意外と大丈夫だった。夢見ていた場所に近づいている」と、きっと思えるはず。
……って、書きながら気づいたけど、昨日会った友だちとも似たような話をしたなぁ。この本のメッセージは、知らないうちに私の深いところまで浸透しているみたい(笑)。

 

この記事を書いた人/西島恵
幼少期より物語や言葉の持つ力に惹かれ、本を読みふけって過ごし、大学卒業後は出版業界に勤務。雑誌や書籍、Webなどさまざまなメディアの制作に携わる。25歳でヨガを始めたこときっかけに、心・体・たましいのつながりに興味を持ち、全米ヨガアライアンス200を取得。現在はフリーランスの編集者・ライターとして日夜、本を作りつつ、都内を中心にヨガの指導も行っている。
https://magma.amebaownd.com

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