吉本ばなな×平良ベティ×平良アイリーン/SITHホ・オポノポノトークイベント「自分に嘘はつかない粋な生き方」〈2〉

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前回ご紹介した、去る8月に渋谷で行われたトークイベント「自分に嘘はつかない、粋な生き方」。SITHホ・オポノポノをベースに、吉本ばななさん、平良ベティさん、平良アイリーンさんのお三方が、質問に答えあったトークの模様をお届けしましょう。
※本文は講演内容を部分抜粋して構成しています。

質問3
ウツ気味になったときの脱出法は?

アイリーン ウツ気味になったとき、どうすれば脱出できますか? また、ウツとは一体、どういう状態ですか?

ばなな この質問をする意図は、私から見てベティさんは、いつもウツと向き合って生きてきた気がしているんです。
それで、私もウツに関して少し敏感というか、「あ、今ちょっとウツっぽいな」とか思ってしまうときに、「あ、今、クリーニングのチャンスなんだ」ととらえるようにしているんですね。その辺をぜひ聞いてみたくて。

「病気というより、自分に戻っていく時間。私にとっては、ハッピーアワーですよ」(ベティ)

ベティ 私は、ウツっていう言葉は、すごく誤解があると思うんですよね。病気というより、「自分に戻っていく時間」だと考えています。
誰にでもオンとオフのスイッチがあって、静かにして外を遮断(オフに)すると、周囲からは「あの人はウツになった」と、誤解されているような気がしますね。
そうではなくて、本当の自分探しっていう時間があって、ウニヒピリと向き合うすごく充実した時間なんですけど、それを娘(アイリーンさん)はウツっていうんですけど(会場、笑い)、私にとっては全然「ハッピーアワー」ですよ。

アイリーン でも小さい頃は、その感じがとても怖かったんですよ。静かになっていく母親が単純に怖かった。はつらつとエプロンをして家事をする母と極端に対照的で・・・。
学校から家に帰ると電気が消えていて、その時に家の中でかかっていた音楽まで覚えていますもん。

ベティ 「アヴェ・マリア」を聴いていました。

アイリーン それが私の中では、母親のウツが始まるサインみたいな・・・(会場、笑い)。でも今は、さっきベティさんが言った「自分に戻っていく時間」だということ、確かにそうだなと思いました。

ばなな よかったですね、解決して(会場、笑)。
私は小説を書く仕事はウツ気味というか、内面と向き合うことと仕事が、ほぼイコールなので。とても寂しくって暗い職業なんですよ。しかもほとんど仕事上は外にも出ていく必要がないので、沈んでいるって誤解されてもおかしくないなっていうことがあります。
でも、そういうときって、物が細かく見えるんですよ。花のガクとか葉っぱの一つひとつの形とか、そういうのが細かく静かに見えて。ですから、エネルギーが無くなってウツになっているのとは違うんですよね。

一般的に言う、病院に行くようなウツというのは、脳内の物質が偏ったりとかいろんな要因があるので、そういうのとはちょっと違うと思うんです。私が見ている感じだと、ほとんどの人がウツと呼んでいるものは「自家中毒」、つまり自分の毒で自分が参ってしまっている状態ではないかなという気がします。

作家がものを書くために潜っていくウツというのは、いわば省エネモードみたいな、電力をすごく低くして、いろんなものを見る時間だったり、探る時間だったり。そんな感じがしますね。

アイリーン 今おっしゃった「自家中毒のウツ」に苦しんでいる人って、多いかもしれませんね。

ばなな 大勢いますよ。

アイリーン そういう人にはどういうアドバイスをしますか?

ばなな 自分のことばっかり考えていたら、必ず人間は病気になるようにできているというか、気持ちが病んでしまうようにできているから、少しでも他人(ひと)のことを考えてあげたらいいんじゃないかな。「あの人、今日はどうしているかな?」とか「あ、この草、枯れそう」とかね。
なんでもいいから、自分以外のことを考えるようにする。そういう時間が減っていくから、自家中毒になっちゃうんじゃないかな。
自分以外の、他者のことを考えないと、外からエネルギーが入ってこなくなると思うんですよね。

質問4
好きなことをやっている中で、やりたくないことが出てきたら

アイリーン どれだけ夢に見ていた仕事に就いたとしても、やりたくない仕事というのが出てきたりします。そういうときの対処法は?

ばなな 私は「出版社をあげての打ち上げ会」というのが苦手なんです。気の合う仲間だけでやるのはいいんですけど。
社長さんから編集、営業まで揃った打ち上げでは、お互いにすごく気を使うし、ある時間が経つと必ず「次回の仕事の話」っていうのがやって来る・・・(会場、笑い)。

ベティ そういうときでもばななさんは、自分のウニヒピリの声を聞いたりしているわけですよね?

ばなな 集まりが息苦しくなったら、「トイレに行ってきます」とか言って席を外して、廊下とかで「やあ、きついなー」って体に言ってあげたりしますね(会場、笑い)。
そういうふうに言ってあげると、体が「きついけどもうちょっとだね」「ここにも味方がいるよ」みたいになるから(心は)平和になりますね。

ベティ ウニヒピリをちょっとケアすることで、全然違うわけですよね。

ばなな あと、深呼吸したり。植木鉢を蹴ったりはしないですね(会場、笑い)。

アイリーン ベティさんが言った「ちょっとのケア」というのを、私はこれまでいかにやらないできたか、ということをホ・オポノポノを知って痛感しました。
自分の中にウニヒピリがいるということに気づいていたのに、ケアするどころか、それを見ないことにすごくエネルギーを使っていました。
ですからホ・オポノポノを学び始めて、インナーチャイルド(ウニヒピリ)のケアの仕方を学んだ時に、すごく衝撃でした。
ウニヒピリという自分の聖なる部分を大切にしている人は、現実社会の中でも何かが違うなと感じますね。

「何かを頑張ったら自分にご褒美をあげることも、ウニヒピリのケアになると思います」(ばなな

ばなな 打ち上げでやって来る「次回の仕事の話」をすべて受けていたら、その場は丸く収まったとしても、自分に正直な行動ではないわけですから、先行き破綻するのが見えているので、そこは頑張ったんだと思います、若い頃の私も。
あと、何かを頑張ったら自分にご褒美をあげるというのも、ウニヒピリのケアになると思います。

ベティ ウニヒピリのケアをしている人同士は、お互いのウニヒピリが仲良くなるという体験を私は多くしているんですよ。だからウソついていると、自分では隠しているつもりでも、相手には全部わかってしまう。だからこそ、セルフケアって大切なんですよね。

 

質問5
自分に正直に生きると、友人・結婚相手など人間関係はどうなる?

アイリーン 二人にとって「お友だち」とは、一体何ですか? 自分に正直であることで、友人付き合いはどうなりますか? 友人付き合いについて二人が心掛けていることを教えてください。

ばなな 私、友だち少ないんですよね。「友だちが少ない組合」に入ってもいいんじゃないかっていうくらいに(会場、笑い)。あまりにも少ない人、助け合いませんかみたいな。

アイリーン えぇー、じゃあお友だちの定義は? だって、すごいたくさんいらっしゃるじゃないですか?

ばなな いえいえ、少ないですよ。私にとっての友だちというのは、むしろ、仲間っていう感じですかね。「同じこと考えているんだろうな、今日も」って思えるような仲間ですかね。

ベティ 私にとっては、友だちって、楽でいられる相手、正直でいられる相手かな。

アイリーン 私はホ・オポノポノと出会って発見したんですけど、それは多くの時間を共有した友だちに対して、「友だちなんだから好きじゃなければいけないと、自分に思い込ませようとしていたな」ということです。
本当の友だちって、そんなふうに思い込ませる必要はなくて、縁あって出会って、一緒に楽しい時間を共有できる相手だと考えると、私の中ではしっくりくるようなりました。

「人間関係は、自分の正直な気持ちをねじ曲げようとすることが多いですよね」(ばなな

ばなな 本でも書きましたが、人間だけが「友だち」という固定した関係性を築きたがる気がします。
人間の場合、「また来週会いましょう」とか考えるわけですけど、他の動物たちを見ていると、もっと一期一会というか、明日も会えるかどうかなんてわかんないよね、みたいな空気の中でいるから、自由でいられるのであって、本来、人間もそういうはずなのに。
人間って、人間関係において、自分の正直な気持ちを「捻じ曲げようとする」ことが多いですよね。

アイリーン それわかります。私は、お互いにほとんどよく知らないままで結婚したんですよ。全然、ライフスタイルも休日の過ごし方もソファでのくつろぎ方も違うし、物事への価値観も違うし。
だから、始めは本当にギクシャクしていましたね。お互いが歩み寄るのにすごい時間がかかりましたけど、それも結局、自己主張をねじ曲げつつ、歩み寄ることですもんね。

ばなな アイリーンさんとこの結婚は、恋愛結婚でもお見合い結婚でもない、近代まれにみるスタイルですよね。恋愛期間もないまま結婚するって、すごい人たちだなと(会場、笑い)。
そこが、いい意味ですごく変わっていますね。
だから、長くやっていけるんじゃないかなって私は思っていたんですけど、苦しむのは無理もないことだと思います。

アイリーン 結婚当初、すごい苦しんで、離婚も真剣に考えました。二人で話し合いもしたんですけど・・・。

ばなな そういう深刻な話をしたら、お母さん(ベティさん)は、「私は岩盤浴に行ってくるね」って温泉に行っちゃったんだよね(笑)。その行動に、すごく私は癒されましたよ(会場、笑い)。

アイリーン 母に相談したら台湾までわざわざ来てくれて、一緒になって戦ってくれるのかなって思ってたら、「岩盤浴に行く」と言って去ったという(会場、笑い)。

ベティ 二人の人生は二人で決めていくことですから、失礼したんですよ。

アイリーン でも、母が来てくれたことで空気は変わったんですね。その時、ヒューレン博士(※4)の言葉を思い出したんです。

※4:ヒューレン博士
イハレアカラ・ヒューレン博士。元ハワイ大学助教授。1983年から国連、ユネスコ、世界平和協議会などで、ハワイに古来から伝わる問題解決法「ホ・オポノポノ」に関する講演を行い、ホ・オポノポノを現代人向けにアレンジしたヒーリング技法の普及に努める。

博士は「離婚はインスピレーションによってするものだ」とおっしゃっていたんですね。
私にとってインスピレーションというのは、ポジティブなメッセージを受け取るツールと考えていたので、「インスピレーションで離婚(=ネガティブ)?」と思ったんですけど。
一応、毎日自分をクリーニングして「離婚したい」というインスピレーションが湧いてくるのか待ったんですね。でも、それはこなかったんです。だから本当に離婚したいわけじゃないんだと、今に至るわけですけど。

本当に離婚したいわけではないと気づいてからは、いろんなことに気づけました。例えば、家族はこうあるべきだといった自分が思い込んでいた「枠」みたいなものが外せたんです。
そして自分が求めていた部分も、「実はちゃんと夫婦関係の中にあったんだ」というのも見えてきたんです。

ばなな そんなお二人の結婚は、まるで「神様が決めたお見合い結婚」みたいなイメージですね。

アイリーン ありがとうございます。本当に彼は、自分が人生で想像したことすらないタイプの人で、その新鮮さに癒されている自分がいます。
ヒューレン博士の言う「インスピレーション」ではないところで離婚を決めなくて、本当に良かったと思っています。当時、お二人にはご迷惑をおかけしました(会場、笑)。

(この記事を書いた人/宙アキラ)



吉本ばなな
1964年、東京生れ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。1987年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞し、デビュー。1988年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、1989(平成元)年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、『TUGUMI』で山本周五郎賞、1995年『アムリタ』で紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアでスカンノ賞、フェンディッシメ文学賞〈Under35〉、マスケラダルジェント賞、カプリ賞を受賞。近著に『吹上奇譚 第一話 ミミとこだち』『切なくそして幸せな、タピオカの夢』がある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた単行本も発売中。

平良アイリーン
1983年、東京生まれ。明治学院大学文学部卒業。2007年にホ・オポノポノと出会って以来、生活のあらゆる場面で実践中。現在はSITHホ・オポノポノ・アジア事務局広報担当として、日本をはじめアジア各国の講演会の際に講師に同伴し活動している。また、ヒューレン博士やKR女史のそばで学んだ自身の体験をシェアする講演活動を行う。著書に『ホ・オポノポノジャーニー ほんとうの自分を生きる旅』、吉本ばななさんとの最新刊共著『ウニヒピリのおしゃべり』(すべて講談社)がある。

平良ベティ
SITHホ・オポノポノ アジア事務局代表。日本、韓国、台湾、マレーシア、シンガポール、中国など、アジア諸国にて同クラスを運営し、日々クリーニングを実践している。


『ウニヒピリのおしゃべり』
ほんとうの自分を生きるってどんなこと?
吉本 ばなな、平良 アイリーン著/講談社
本体1800円+税

 


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