仕事柄、営業で書店を訪問する機会が多く、ここ数週間で売れ行き好調な書籍の一冊が、『ウニヒピリのおしゃべり』だった。
最近、スピ系の有名著者との対談本も何冊か出されるようになった、世界的小説家の吉本ばななさん。
本書は、ハワイに伝わる問題解決法「ホ・オポノポノ」を通して自分らしさを模索する平良アイリーンさんとの対談本ということで、売れている理由を探しながら読んでみた。
幸せになりたいならウニヒピリの声を聞くこと
本を手にとって、まずは目次に目を通してみると。
吉本ばなな短編小説/ウニヒピリ 自分の中の小さな子ども
第一章/生きやすさのヒント
第二章/自分らしい仕事・生き方
第三章/生きづらさの理由
第四章/矛盾のない生き方
第五章/ほんとうの自分を生きるために
これを見ただけで、女性同士の対談で、どんな会話が進行していくのか興味津々に。
具体的には洋服のこと、お化粧のこと、旦那さんの家族との付き合いのことなどをお話しされていて、お二人にもさまざまな課題があり、失敗もあったようだ。その生活感あふれる内容に、同じ人間であることからくる親しみを感じた。
誰もが知りたいようなテーマについて語られているだけに、仕事や人間関係、子育て、家族、生き方など、人生に効くヒントが満載で、いかにも読者のニーズを満たしてくれそうだ。
全編を通じて、とても読みやすく、何か高尚な難しいことは書かれていないけれど、意識の中にその大切なエキスが染み入るとでもいうのだろうか。
ポイントは、幸せな人生を歩むためには、いかなるときも自分の中にいる小さなこども「ウニヒピリ」の声を聞き、自分に無理をさせず、正直な気持ちに従うことにあるようだ。
読み進めるうちに、いつの間にか二人の会話に引き込まれていく自分がいた。こういう時というのは、時間が経つ感覚も忘れてしまうものだ。
アダルトチルドレンとインナーチャイルド
本書では、ウニヒピリについて「私の中にいる、昔から、どんなときでもいっしょにいる、小さい女の子」と説明されている。
ところで、読んでいる途中、あるキーワードが、フッ!と脳内に降りてきた。
「インナーチャイルド!」。
「内なる子供」と訳され、「傷ついた子どもの心」のことを指すとも言われている。つまり、ウニヒピリとはインナーチャイルドでもあるわけだ。
そして、数ヵ月前のことを思い出した。
日本でも有数の女性実業家で、斎藤一人さんのお弟子さんでもある舛岡はなゑさんを取材したときのこと、数々の有意義なお話の中でも、最も印象深かったのが「悩みについて」だった。
舛岡さん自身は、なんと「今まで悩みがない人生」を送っているそうで、通常、人々が抱く悩みの原因を、「子どもの頃に我慢した抑圧をずっと引きずるからだと思います」と喝破されていた。
これこそまさに、インナーチャイルドのことではないか!
彼女は今までに相当な回数の講演をこなし、インナーチャイルドのケアが必要な人たちをたくさん見てきただけに、その言葉の信憑性には確かなものがある。
きっと相当な数のアダルトチルドレン(大人になっても子どもの時に受けた傷や過剰な信念を抱えていて、それが原因で今も生きづらさを抱えている人)がいるのだろう。
潜在意識の中に、傷ついて泣いている子どもの心が、今も当時のまま生き続けている人たち。
本書は、そういう読者にとっての心強い手引書となる、とても優れたインナーチャイルド・セラピー本といえるだろう。
(この記事を書いた人/丹波-浪速 道)
『ウニヒピリのおしゃべり』
ほんとうの自分を生きるってどんなこと?
吉本 ばなな、平良 アイリーン著/講談社
本体1800円+税