この本を読み終わった感想はというと、意外だが、なんともいえない清清しさだった。
本のあらすじは、生後2ヵ月で異変が起き、翌月から肺機能不全になってしまった優司君とその家族が織り成す、873日間にわたる魂の交流の物語だ。
絶体絶命を転換させた「天国言葉の力」
普通の主婦だった著者のあずささんが突然受けた、1歳の優司君の余命宣告。
最愛の息子との限られた時間を、どうすれば幸せに過ごせるのか・・・。このような闘病記の類書はたくさん出版されていて、悲壮感や虚しさなどを感じさせるものが少なくはない。
余命宣告されたばかりの頃、当然ながら、あずささんの口から出る言葉は「愚痴」「不満」「不平」「悲しみ」「恐れ」「泣き言」などといつも隣り合わせだった。そんな精神的にギリギリだった彼女に助けの手を差し伸べたのが、夫の存在だった。
彼は斎藤一人さんの教えにならい、あずささんに「天国言葉」を使うことを勧めると、その日から「天国言葉」を使う“修行”が始まっていく。
途中で心が折れそうになったり、自暴自棄になりかけたり。紆余曲折を経ながらも、結果的には家族が精神的に成長していく過程が見事に描かれた本書。「天国言葉」を使って意識を転換させることで、逆境が逆境でなくなっていったのだ。
人は普段の生活の中で、ついついネガティブな言葉(斎藤一人さん流では「地獄言葉」)を発してしまうものだが、言霊がいかに大切かということも、この物語は教示してくれる。
霊的側面から見たときのハンデキャップの意味
10年前頃、小林正観さんというベストセラー作家の本を、何冊も読んだことがあった。
彼の娘さんは生まれながらにハンデキャップがあり、彼の著書の中にも「障害を持って生まれてくる確率は600人に1人」という記述があった。
この確率は、決して低くはないだろう。もし、人間が輪廻転生するとしたら、600回に1回はハンデを持った人生を送る計算になるからだ。
斎藤一人さんの講和の中にも、こういう言葉があった。
「人ってね、物凄い回数の生まれ変わりをしてるんだよね。じゃ、その理由はっていうとね、生まれ変わることで魂を高めるからなんだよ。人は転生する前に、あっちの世界であらかじめ人生計画をデザインして生まれてくるんだよ。だから、ハンデを持って生まれてくる人ってね、ものすごく強い魂の持ち主なんだよな・・・」。
果たして自分も、過去生でそういう境遇に生まれたことがあったのだろうか?
何度目かの来世で、そういう境遇を体験する宿命なんだろうか?
こういう見えない世界に思いを巡らせた時、ハンデを持って生まれている多くの人たちに対する見方が、自分の中で大きく変わらざるを得なかった。
視点を転換させると苦しみは大きく減じる
そんな時、「代受苦者」という言葉を思い出した。
仏教の言葉の一つで、「本来は自分が受けていたかも知れない痛みや苦しみを、代わりに受けてくれる人」という意味だ。
この物語の優司君や、視覚と聴覚の重複障害者だったヘレン・ケラー、東北関東大震災で死傷された2万人以上の方々など、いずれも代受苦者と言えるのかも知れない。
「もしかしたら優司君は、自分の身代わりに肺機能不全という病氣になってくれたのかも知れない」
「もしかしたらヘレン・ケラーは、自分の身代わりに二つもの障害を持つことで、私は健常者に生まれることができたのかも知れない」
「もしかしたら大震災で亡くなられた方々は、そのことで私たちに多くのことを学ばせてくれているのかも知れない」
この物語を読む時、「代受苦者」という視点で読んでみることをお勧めしたい。そうすれば、優司君やそのご家族と同じような境遇に置かれている方々に限らず、この本から得るものが大きいはずだ。
生きていれば誰にだって悩みや苦しみはつきものだが、視点を転換することで、それらを大きく改善できる。
優司くんを看取るまでに、母のあづささんがどのような心境の変化を遂げていったか、それがこの本の醍醐味でもある。自分自身の人生を明るく有意義に悔いなく生きるためのツールとして、視点を転換することをぜひ、実践して欲しい!
『ありがとう。ママはもう大丈夫だよ』
泣いて、泣いて、笑って笑った873日
武藤あずさ著/ライトワーカー
(この記事を書いた人)
丹波-浪速 道(たんばなにわどう)/元ナチュラルスピリット社の関西支局担当者として、営業・取材・編集などに6年間従事。丹波~浪速の(京都~大阪を主軸とした)近畿圏の霊ラインを活性化させて、伊勢~白山の霊ラインにからませた霊ラインの十字架をつくることで、日本人の意識の目醒めを促進。現在は活動拠点を東京に移し、日本の未来を牽引していく'Star People'の発掘に余念がない。1986年、アメリカ大陸を101日かけて自転車横断達成。生まれながらの冒険野郎。次なる夢は、地球の地底世界に移住すること(笑)。