ヘルメス・J・シャンブの「“在る”の息吹」/vol.2 彼女と私と、もう一人の彼女

B!

ナチュスピのセッションが人気で、新刊『ヘルメス・ギーター』がもうすぐ発売される、ヘルメス・J・シャンブさん。
今回は通常の記事形式ではなく、ヘルメスさんお得意の小説タッチで、気づきの物語を届けてくださいました。
※2冊目の著書『道化師の石(ラピス)』も小説仕立てで、独自の世界観を伝えています。

2月20日発売予定!
『へルメス・ギーター』
ヘルメス・J・シャンブ著/ナチュラルスピリット

 

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彼女と私と、もう一人の彼女

彼女のことは、気づいたらいつの間にか嫌いになっていて、その理由はたくさんあるのだけど、でも一番嫌なのは、彼女の長くて黒い髪が、後ろで一本に束ねられているところ。
私はそれが好きじゃない。どうしてだろうって考えたことがあるけど、自分でもわからなかった。

昔は仲が良かった、中学生の頃は。いつも男子たちが彼女をバカにするから、私は彼女を守ろうとしていたし、きっと、守っている自分が大好きだったのかもしれない。
高校に入ると、彼女との距離を感じるようになって、どういうわけか大学も一緒になったのだけど、もう話を交わすこともなくなった。

私はクラブによく行くし、飲み会もよくあるし、勉強よりもやっぱり遊ぶことが好き。大好き。
私は自由奔放に楽しく生きているけれど、でも彼女を見ると、なぜか頭にきてしまう。なぜか、私は彼女が大嫌いなの。

最近の私はちょっとどこかおかしくて、自分でもそれがわかっている。
クラブで遊んでいて、わいわいと賑やかにしているのに、ふとした瞬間、まったく音を感じない。みんなはお酒を片手に大声で笑っているけれど、でもそこには音がなくて、私だけが停止しているかのよう。
ぽっかり。  
私自身が空洞になったみたいに、ぽっかり。  
私に穴が空いたよう。

そうすると、突然、涙が出そうになってくる。

自分を嫌いだ、という人の気持ちがこれまでわからなかったけど、なんだか今はよくわかるような気がする。
そう、でも、私はどこかでそれを認めたくはない。認めたくはないことを知っている。
そう、私は抵抗しているのがわかる。

最近の私はちょっとどこかおかしくて、勉強しなくて大丈夫かな・・・とか、この先にいったい何があるのだろう・・・なんて、ふと、考えてしまう。
こんな自分が私の中にいるなんて、私はこれまで知らなかった。

何をやっても楽しくない、なんて言う人のことを、ちょっと軽蔑するかのように思っていたけれど、なんだか私、今は・・・・。
だから私は、彼女のことが本当に頭にきている。きっと、彼女のことを認めたくないのだ。

なんだか散歩に出かけたくなって、近くの公園に行ってみた。そこは震災の跡地のようで、燃えたものが、あれこれ置かれていた。美術品のように。

これって、飾るもの?
災害を伝えるって、どういうことだろう?

おじいさんが、あまりかわいくもない犬を連れて散歩をしている。よく見ると、だんだんその犬がかわいらしく見えてきた。
なんだか私、やっぱり最近、ちょっとどこかおかしい。なんで、おじいさんが素敵に、愛らしく見えるのだろう?

ベンチに座ってふと溜息をついたら、向こうのベンチに座っている彼女が見えた。あの、長く一本に束ねられた髪、あの地味な格好、あの大人しそうな、静かな感じ。
彼女はいつものように本を読んでいた。いつもと同じ。まったく同じ。
何も変わっていない。ずっと前から、中学生の時からずっと変わっていない、あの感じ。
でも、どうしてだろう、今日は頭にこない。いつもならすぐに、なんだか苛立ってしまうのに。

私は彼女が嫌いだ。嫌いだと思っていた。でも、どうして嫌いなのだろう? 彼女はただ静かに、いつものように本を読んでいるだけ。

いったい何を読んでいるの?
勉強? 小説?
なんでそんなに読書が楽しいの?
もっと楽しいことはたくさんあるのに。

本当に? って自分に問いかける。
もっとたくさん・・・本当に楽しいことって、何だろう?
私はもう今、何も楽しいと思えない。

彼女はいったい何を読んでいるのだろう? ずっと前から、ずっと静かに読書ばかり。私はそんな彼女が嫌い。
私は青空を見上げた。

ねえ、神様って本当にいるの?
いったい、神様って、どんな言葉を話すの?
どんな格好をしていて、いったい毎日何をしているの?
ねえ、奇跡って何だろう?
奇跡が起こるって、いったいどういうこと?

なんだか私、今日はもっと変。どこか、いつもよりおかしい。だって、彼女に話しかけたくなっている。そう、私は彼女と話したいって思っている。

嫌いなのに?
本当は好きなのだろうか?
でもどこが? 何が?
人って、どうして理由を求めるのだろう?
どうして意味がないと、安心できないの?

意味や理由がないと、何かをしちゃいけないって、感じてしまう。意味や理由がないと、何もできないような気がしてしまう。

ねえ、神様、私はいったいどんな意味があって生きているの?
ねえ神様、私はいったいどんな理由があって、今ここに、こうして生きているの?

もしも奇跡というものが存在するなら、私は知りたい。意味や理由が知りたい。ちゃんとした意味と理由が。

私は自分の好きなように生きてきたつもりだけど、そうしてきても、なんだか私は今、幸せじゃない。なんだか彼女よりずっと悲しく、ずっと淋しく思えてしまう。
彼女にはちゃんと意味と理由があって、彼女はその意味と理由をちゃんと理解して生きているように思えてしまう。
そう、あのおじいさんも犬も。

彼女の、少し丸まった背中が、なんだか今日は素敵。なんだかしっかりしている。誰かが今の私の後ろ姿を見たら、いったいどういうふうに見えるのだろう。

私の後ろ姿を見たら、ねえ、どう思うの?

なんだかそんなことを考えたら、もっと悲しくなってきた。涙が出てきそうになって、堪えたいけど、堪えたくない感じ。

私は彼女の背中に、いったい何を見ているのだろう?
あのおじさんの背中に、何を感じるの?
私の後ろ姿を見て、あなたはいったい何を感じるの?
私の背中に、何を見るの?

そう。そうかもしれない。私は彼女の後ろ姿を見ているのではなく、ただ自分の思いを見ているだけなのかもしれない。彼女のあの黒く、一本に長く束ねられたあの髪に、私自身の思いを見ているだけなのかもしれない。

彼女はずっと昔から何も変わらなくて、私はそれがとても大嫌いだった。
守ってあげながら、「どうして変わらないの?」ってずっと思ってきた。私はこんなに変化してきたのに。私はこんなに成長してきたのに、って。
あなたが全然変わらないから、私が必死にあなたを変えようと努力することになる。

でも神様、私、ちょっと気づいちゃったみたい。彼女のあの、ずっと変わらない髪型を見ていたら、私、やっとわかったみたい。

ぽっかり穴が空いていたんじゃない。
全然、逆だった。
心の中がたくさんの荷物でいっぱいになってた。

奇跡って、こういうこと?

ねえ、神様、私はこれから彼女に話しかけに行きたい。
いらない荷物をここに置いて、今すぐ話しかけに行きたい。

 

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ヘルメス・J・シャンブ
1975年生まれ。30代前半、挫折と苦悩を転機に、導かれるように真理探求の道に入る。さまざまな教えを学び、寺で修業し、巡礼の旅に出るが、最終的に「全ては私の中に在る」と得心、悟入する。数回に分けて体験した目覚めにより、ワンネス(一つであること)を認識し、数々の教えの統合作業に入る。「在る」という教えは、これまでの師たちの伝統的な教えであるため、師たちの名前を借りて「ヘルメス・J・シャンブ」と名乗り、初著作『“それは在る』を執筆。 その後『道化師の石(ラピス)』も刊行。現在は、ナチュラルスピリットでの個人セッションなどで、探求者たちに教えを伝えている。
https://twitter.com/hermes_j_s

『道化師の石(ラピス) BOX入り1巻2巻セット』
ヘルメス・J・シャンブ著/ナチュラルスピリット

『 “それは在る』
ヘルメス・J・シャンブ著/ナチュラルスピリット

 

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