星新一のショートショートを読んでいるような、好奇心をくすぐられる楽しさ、展開の奇抜さ、そしてほのかに感じる温かさがこの本にはあり、読みながら「人生を楽しく生きていきたい」と思わせる、自分を顧みさせてしまう本質的なトピックがたくさん詰まっています。
時空を超える感覚を自然と身につける方法が満載
さて内容は、近しい人がカルマを共有するかのようにつながっている不思議さやパラレルワールド、人類の進化など、いろいろなことを、まさしくショートショートのように語っていくのですが、驚くのはそのどれもが自身が体験したこと、当事者から聞いたことなので、語り口は軽快ではありますが、そのじつ内容は“命や生きることについて考えさせられるものばかり”です。
毒親やアトピーやハラスメントなど、深刻な問題に直面している人には、自然の中での「アーシング」などを紹介したりしています。
しかしこれら人間関係だけでなく、“精神疾患やウイルス疾患など、人は多くの問題を抱えているけれど、大きな観点から見るとそれらは人類を進化させるべく起こっているかもしれない”と著者は言います。
人類が宇宙に進出することにより、医療も変わるかもしれません。そのことが、こんなふうに書かれています。
将来、病気やケガを偶発的なものとして見るのではなく、意味あるものとして捉えるホリスティック医療に移行していく可能性があるね。
人間の身体を単なる物質として見るのではなく、意識の表現として捉えるようになるかもしれん。意識で身体に影響を与える治療が主流になり、薬や手術はその手助けとなるツールになっているだろう。
すでに一部は実用化されつつあるように、失われた人体の再生も可能となるに違いない。
ヘイフリック限界は、認識や生物圏の規模と比例するというのが、私の仮説なのですよ。
つまり、限りある地球の中では、ヘイフリック限界が発生するのです。それを突破するには、宇宙に行くしかないのですなっ!!
ヘイフリック限界は主に、人の細胞分裂の上限のことを言いますが、時空の舞台となる“地球上”という環境設定が限界を与えているだけで、宇宙に出てしまえばその限りではないということなのです。
おもしろいです。
変性意識や覚醒体験と言われるものについても、非常に示唆に富んだことを言っています。
「星を観ていたら、やがて体が宇宙に吸い込まれて一体化するような感覚が発生したのです」。
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「樹木の根元に座って大地に触れ、アーシングをしたのです。とたんに、なんとも言えない喜びや、世界に感謝したい気持ちが溢れてきた」。
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「足を海に浸しながら泣いていたのですよ。しばらく泣いていたのですが、そのうち、不思議な感覚が発生し始めたのです。波の音を聴きながら、心が穏やかになっていったのです。
(中略)世界や宇宙と繋がっているという感覚が発生し始めました」。
これらの変性意識の記述の前後には、もちろん各人各様の苦しみのストーリーとその後の変化した現実の様子が書かれています。
アブラハム・マスローにならい、この本では「ピーク体験」と呼んでいます。
さて、ではどういう人がこれらの体験をするのでしょうか。
なぜ一般の人にはそれが起こらないのか?理由はかんたんなのだ。
条件付けをするからなのだよ!
病気が治ったら幸せになれる。お金が手に入ったら幸せになれる。結婚できたら幸せになれる。合格したら幸せになれる。裁判に勝ったら幸せになれる。子どもができたら幸せになれる…。
ひたすら、条件付けをし続けて、幸せを感じられなくするのだよ。
では、条件付けをやめたらピーク体験をするのでしょうか。(これ自体、おそらく相当難しい!)
しかし、著者はちょっと違い、こう言います。
(彼らがピーク体験をしたのは)絶望したからだ! 絶望が、すべての条件付けを手放させたのだ! 単純な真理だよ。
全ての生命体は必ず死ぬのだ。
だから、幸せになる条件付けをやめて、今を味わうのだ。死を認識することで、意識は無限の生命のネットワークと繋がるのだよ。
人間の多くは、無限の生命のネットワークから切り離されているのだ。だから、絶えず孤独や不安に苦しみ続けるのかもしれないね。
この生命のネットワークと繋がった時、人間の意識は進化するのだ。次のステージに進むのだよ。
社会や人間の不条理、自然界の弱肉強食、あらゆる不合理に対しても、それを人類の進化という観点からみると、温かく意味のあるものなんだということが伝わってきます。
話はミクロからマクロまで自由自在に広がり、壮大です。
読みながら、もしかしたら読者は、変性意識の過程をたどっているのかもしれません。
(この記事を書いた人/東村山キヨ)
『地球統合計画 ケルマデック』
ケルマデック著/エムエム・ブックス
本体1,000円+税