高僧・白隠禅師が説いた大いなる救済法『汝のこころを虚空に繋げ』(書評)

B!

営業で街中を移動していると、行き交う人たちのほとんどがマスクをしている。
去年の9月、果たして誰がこのような1年後の未来を予想できただろうか!?

「三密」の通勤電車に揺られながらの帰宅途中、ふと9年前に観た『コンテイジョン』という映画を思い出していた。
グウィネス・パルトロウ演じる女性が咳込むシーンで始まる本作は、今や世界を巻き込んだパンデミックを予見していたかのような、秀逸な細菌パニック映画だ。
全世界で蔓延する未知のウイルス、加速度的に崩壊していく日常生活・・・。

ところで、人類の歴史をさかのぼると、それは病原体との闘いであり、天災との闘いでもあったと言えるだろう。

白隠禅師が広めた最も功徳のあるお経

今回、ご紹介させていただくのは『汝のこころを虚空に繋げ』(帯津良一著/風雲舎)。

サブタイトルの「白隠さんの『延命十句観音経』を読む」にあるように、本書は江戸時代の高僧・白隠禅師(1686年~1769年)が世に広めたお経についての物語だ。

著者の帯津良一さんは、代替医療を用いて多くのガン患者を救ってきた、ホリスティック医療界の第一人者。
人間を「体・心・氣・霊性」などの有機的統合体と捉え、社会・自然・宇宙との調和にもとづく全体的な健康観の視点で書かれた、医師の帯津さん流『延命十句観音経』の解説本と言える。

そもそも『延命十句観音経』とは、霊元天皇(1654年~1732年)が退位して上皇になった時、比叡山の霊空光謙という高僧に「簡単に唱えることができて、最も功徳があるお経を探すように」と命じたことに端を発している。

あらゆる仏教聖典を精査した中から、やっと見つけ出された『延命十句観音経』。
しかしながら、いわゆる「経典」(仏陀の言行録)ではなく、誰かの個人的な信仰告白文ではないかと言われているらしい。

白隠禅師は、江戸時代中期に活躍し、何度も大悟した霊格の高い臨済宗の傑僧で、禅の教えを庶民に平易に説いて廻ったことで知られる。

白隠禅師が生きた江戸時代の元禄期(1688年~1704年)は、高度経済成長の華やかな時期もあれば、元禄地震(1703年)、宝永地震(1707年)、津波や富士山の大噴火が起こったという激動の時代。
火山灰で作物は壊滅状態、不穏な社会に民衆の不安は高まるばかり。

そのような異変の続く世の中で苦悩する庶民を勇氣づけ、安心させるために白隠禅師が広めたのが、『延命十句観音経』なのだ。

たった十句で霊験あらたかなと話題に

ところで、このお経の特徴は、たったの十句の42文字という短さにある。

観世音(かんぜおん)
南無仏(なむぶつ)
与仏有因(よぶつういん)
与仏有縁(よぶつうえん)
仏法僧縁(ぶっぽうそうえん)
常楽我浄(じょうらくがじょう)
念観世音(ちょうねんかんぜおん)
暮念観世音(ぼねんかんぜおん)
念念従心起(ねんねんじゅうしんき)
念念不離心(ねんねんふりしん)

 

法華経の中の『観音経』や『般若心経』などは、長いので覚えるのが大変だが、これは覚えやすい!

白隠禅師は、この『十句観音経』がもつ功徳(ご利益)を、さまざまな霊験の実例をたくさんあげて「仮名法語」(漢字仮名まじり文で平易に説明した仏教の教義)でも示した。
それが『延命十句観音経霊験記』だ。たくさんの信じがたい奇跡的な例を紹介することで、庶民のやる氣を喚起し、口コミで急速に広まっていったようだ。

心と命に奇跡を起こす「虚空」の力

私は一度だけだが、著者の講演会に参加したことがある。
その時、白隠禅師にまつわる話が出て、こう語っていたことを今でもよく覚えている。「虚空」という言葉を耳にしたのは、その時が初めてだったからだ。

「私たちは虚空からやってきて、虚空に帰っていく存在。生きながら虚空と一体になることを目指しなさいという、白隠さんのメッセージに感銘を受けたのです」。

本書のタイトルにもある、「虚空」。
この本のメインテーマでもあり、随所で解説されているので、いくつか引用してみよう。

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「一日中いかなるときも虚空を感じ、虚空とともに生きる。そうすれば、不安も恐怖も減じていく。
大地震が起こり、富士山が噴火し、食料は不足し、病が流行り、多くの人が命を脅かされておろおろしています。そんなときだからこそ、目先のことにとらわれず、虚空を観じていたのです。
だから、ひとりでも多くの人に虚空を観じてもらいたい。その手段が『延命十句観音経』であり、気持ちを込めて唱えれば虚空から救いの手が差し伸べられる、と説いたのでしょう」。

「たった十句の短いお経ですが、唱えていると、内なる虚空であるソウルに響きます。そこから、いのちのふるさとである大いなる虚空のスピリットに届きます。
ソウルとスピリットが共鳴して、巨大なエネルギーが私たちのいのちに流れ込みます。
計算し尽くされています。現代科学をはるかに超えた知恵であり知識です。
感服するしかありません。だから、とんでもない奇跡が起こるのです」。

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白隠禅師と虚空の関係性を、著者はさまざまな角度から紐解いていく。
白隠禅師が『延命十句観音経』を広めた元禄期と、新型コロナウィルスの蔓延で大騒ぎしている現代には、大きな共通項があるのではないだろうか。

そして、こんな大変な時期だからこそ、心や命に深くアクセスできる術が必要なのだ。
そう! その答えとは……、汝のこころを虚空に繋げ!

(この記事を書いた人)
丹波-浪速道/元ナチュラルスピリット社の関西支局担当者として、営業・取材・編集などに6年間従事。丹波~浪速の(京都~大阪を主軸とした)近畿圏の霊ラインを活性化させて、伊勢~白山の霊ラインにからませた霊ラインの十字架をつくることで、日本人の意識の目醒めを促進。1986年、アメリカ大陸を101日かけて自転車横断達成。生まれながらの冒険野郎。次なる夢は、地球の地底世界に移住すること。

『汝のこころを虚空に繋げ』
帯津良一著/風雲舎
本体1500円+税

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