吉川浩/日本の森と大和ミツバチを守りたい【『StarPeople』バックナンバーより】

アインシュタイン博士は「ミツバチがいなくなれば、人類は4年で滅ぶ」との言葉を遺しました。そして現在、世界的問題となっている西洋ミツバチの大量死よりも、大規模に消滅しているのが、日本固有の在来種・大和ミツバチです。この現状を食い止めるべく、命がけで東奔西走されているのが、ミツバチ保護活動家の吉川浩さん。
『StarPeople』バックナンバー64号「日本の森と大和ミツバチを守りたい」でのインタビューをご紹介しましょう。
*2017年9月時点の内容となります。

保護活動の地域は40カ所に増加

ーー仕事を退職して始めた自給自足の生活の中で、ミツバチの保護活動を始められたそうですね。

2006年に、奈良県でかなり広範囲に捕獲できる巣箱を130個、設置したのが始まりでした。でも、大和ミツバチ(ニホンミツバチ)が入った巣箱はわずかでした。
そこから、大和ミツバチはスギやヒノキなどの花が蜜を出さない針葉樹林の近くでは巣を作らず、カシやシイなどの花が蜜を出す広葉樹林の近くでは巣を作ることがわかりました。
宅地開発や森林伐採などで、自然林である広葉樹林が減っているので、彼らの生息地が消滅すれば、個体数が減るのも当然の成り行きです。
大和ミツバチは、森の木の空洞に棲み、草木の花の蜜を集めます。そして、受粉した花が実を付け、実が落ちて動物や昆虫の餌となり、豊かな森は再生をくり返してきました。ミツバチが減り続けると、農作物の受粉ができなくなり、人類の食にとっても大問題になりかねません。

2015年に結成した「BeeForest Club(ミツバチと森をつくる会)」は、営利や養蜂が目的ではありません。日本中に巣箱を設置して大和ミツバチの棲む森を増やし、彼らの営巣を促して、地域の農作物や野山の草木の受粉率を高めることを目的としています。会員数は150名を超え、ミツバチの棲む森も近畿地方を中心に40カ所まで増えました。

国立・国定自然公園指導員でもある、大和ミツバチ研究所所長の吉川さん。かつて環境デザイン業界で、独自のマーケティング理論で多くの企業を指導してきました。

 

ーー保護活動を通じて、どんなことを伝えたいですか。

いちばんは、大和ミツバチの存在とその重要性を伝え、一緒に守りましょう、ということです。でもまずは、近年、日本の生態系をおびやかす西洋ミツバチの野生化が始まっていることを、伝えたいと思います。
現在、日本には太古からの在来種である野生の大和ミツバチと、明治初期に蜂蜜採取用としてアメリカから輸入された外来種の西洋ミツバチの2種類が生息しています。

西洋ミツバチは、人工的に生産した農業資材なので、いくらでも増やせて、体も群れの規模も大和ミツバチより大きい。大和ミツバチは野生なので増やせず、西洋ミツバチ養蜂が盛んになるほど生息圏が奪われてしまいます。
西洋ミツバチは、自然の生態系を壊すことはあっても、生態系を豊かにすることはありません。彼らが分蜂(新しい巣への引越し)して、国内での生息圏がどんどんと拡大し、野生化し始めているとなると、危機的状況です。西洋ミツバチ養蜂がブームなだけに、少しでも早く、日本人の「ミツバチ観」を変えて、そこにブレーキをかけたいんです。
日本の養蜂業界も研究者もこの状況には無関心で、野放し状態です。さらに、銀座などの都心部で西洋ミツバチを養蜂したり、地域おこしにまで広がろうとしています。事実を正しく認識してから始めないと、取り返しのつかないことになってしまいます。

養蜂ブームが自然の生態系を破壊する

ーー今年6月、侵略的外来種の〝ヒアリ〟が話題になりましたね。
(侵略的外来種とは、
人間の活動によって、ほかの地域から入ってきた生物の中で、生態系を脅かす恐れのある生物のこと。ヒアリは、大陸原産のアリの一種。世界の侵略的外来種ワースト100選定種)。

外来種のすべてが悪いわけではなく、危惧すべきは、ヒアリのような侵略的外来種です。
外来種の西洋ミツバチは、元々の大和ミツバチのテリトリーで受粉をするようになり、限られた蜜源植物(採蜜するための植物)の奪い合いが起こります。繁殖力のある西洋ミツバチは、群れの数が大和ミツバチの5~10倍にも増え、さらに採蜜能力もはるかに優れているので、大和ミツバチの食糧も生息圏もどんどん奪われていることは間違いありません。
つまり、西洋ミツバチは侵略的外来種といえるもので、これに法を適用して規制をかけられないかな、と思っています。外来生物法や生物多様性を意識している学識者や団体の方々に、ぜひ、西洋ミツバチの野生化という事実に目を向けてもらいたいのです。

通説として、「西洋ミツバチは野生化しない」と本には書かれていますが、養蜂家の方々に聞いたら、誰もが「野生化する」と当然のように答えました。
分蜂して逃げた西洋ミツバチの群れが、最低1年間は生きることが野生化の必須条件だと考えていたところ、三重県の養蜂家の西洋ミツバチ3群のうち1群が元気に越冬していて、その養蜂家も野生化を認めていました。
野生化すると、侵略的外来生物となり、自然の生態系が破壊されていきます。西洋ミツバチの経済波及効果は年間4千億円以上といわれますが、大和ミツバチの存在価値は、お金になど換算できないほど重要です。

西洋ミツバチは1種類の花で集中採蜜しますが、大和ミツバチは、グループに分かれて狭い範囲の多様な草木をこまめに回り、複数種の花で採蜜します。
再生力豊かな森を維持する鍵は、大和ミツバチが握っているといえます。西洋ミツバチの養蜂がブームなだけに、このまま放っておくと、近い将来、大変な事態になってしまいます。

ーー外来種が在来種を駆逐するという図式は、征服・支配をくり返してきた人類の歴史とも共通する気がします。

そうですね。たとえば、アメリカに白人が渡来して、ネイティブ・アメリカンを居留区に追いやったのと、西洋ミツバチが大和ミツバチを追いやっている構図がとてもよく似ています。
現代の日本人は、大和ミツバチを守らなければなりません。そのためにも、私たちの考えや活動を世界に向けて発信していきたい。BeeForest Club を立ち上げて今年で3年目なので、あと2年かけて、国内でもメジャーにするつもりです。
西洋ミツバチが野生化しているという事実を垣間見てしまったからには、そこから目を逸らすわけにはいきません。その客観的現象を社会に顕在化させ、専門家の中で議論を沸き立たせるための情報を、これからも提供し続けていきたいと考えています。

 

吉川 浩
よしかわひろし/養蜂家。大和ミツバチ研究所所長。Bee Forest Club 会長。国立・国定自然公園指導員。画家を志した後、環境デザインの世界に入り、会社を設立。独自のマーケティング理論で多くの企業を指導し、40歳の時に『介護ジャーナル』を創刊(現在休刊中)。59歳で大阪市立大学にて博士号を取得。著書に『母がおカネをかくします』(小学館)がある。ナチュラルスピリットの姉妹出版社・ライトワーカーより、著書を年内刊行予定。
大和ミツバチ研究所
http://bee.agriart.info/

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