読む人の心の透明度が計られる本『HOPI ホピ』

徳間書店発行の『HOPI ホピ』(天川彩著)は、読む人の心の透明度が計られる本です。こう書いてしまったからには「面白かった。心が洗われるような気がした」と書き出さないと、私、実は腹黒い人間ですよと小さい声でささやいているようで、何ともブーメランを投げてしまった気分になります(苦笑)。

人生に悩んでいた時に天川神社で天啓を受ける

この本は、心の透明度だけでなく、考え方や習慣、価値観などがホピの人々によって語られています。またホピの友人、精霊カチーナ人形など貴重な写真も満載で、彼らを身近に感じることができます。
広島・長崎の原爆投下を意味すると言われる文言を含め、ホピは予言でも有名ですが、そのようなオカルトチックな面を掘り下げるというより、ホピの平和を願う人間性に焦点を当てていて、彼らの信仰や考え方、風習などを紹介し、次に彼らの生きた声を読者に伝えています。

著者は不思議な導きでホピの人々と出会います。その話だけでも、本の中に引き込まれていきます。
バブル全盛期の生活、その後の阪神・淡路大震災、仕事づけの日々の中で感じるもろもろの不条理。これらいろいろなものが積み重なり、仕事に矛盾を感じた時、ちょうど奈良の天河神社へ行く機会を得たのです。
本人が遠足気分で行くと、神殿に体を向けた瞬間、突如と大きな声で「よく来た。待っていたぞ!」と神殿から響きわたるような声を投げかけられました。その場で腰を抜かしたものの、何分後かには宮司さんに自分のペンネームに「天川」の文字がほしいと申し出ます。
すると、宮司さんからこう言われたのです。「あなたは天川を名乗る人です」「天という字は、(二つの横棒が使われていて、それは)上が長く下が短い。その横棒は天と地なのです。そしてそこに人が交わり、天という文字になる。その天の川を流し彩るのがあなたの役目なのですよ」と。
そこから不思議な出会いや出来事がどんどん起こり、「ホピ」へといざなわれていったのでした。

あり得ないビッグチャンスが現実に

圧巻はホピ族との出会いの経緯です。
著者は「ホピ」を英語検索し、カチーナ(精霊人形)で自分と同じ名の「AYA」を見つけます。そのAYAに会いたいと思っていると、数日後、知り合いの女性から連絡が来て、「来月、ホピの儀式に世界から8人が呼ばれていて、長老に贈り物を届けることになっているんだけど、あなたもその一人になっているの。だから来月、アメリカへ行きましょう」と言われたのです。
何とも天から降ってきたような突拍子もない話なのですが、彼女はアメリカに旅立ちます。そして紆余曲折を経て、その言葉どおり、本当に世界各地から集まった8人が儀式で長老に贈り物を手渡す際の一人となっていたのです。

こう書くと、いかにも自分は特別な人間だと主張しているようにも見えますが、著者はいたって日常目線の文調で、等身大でつづっています。そこに何とも好感が持てて、純朴素朴なホピの人々と、魂で友だちになれたのだろうなとうなづけてしまうのです。

真の豊かさを問いかけるホピ族の精神性

後半はホピの友人へのインタビューです。そこには彼らの思いや考えが短いながらに込められています。その中にはこういうのもあります。
あるホピ族の若い女性が「ホピ」とは何なのか、自らのアイデンティティに悩んでいたとき、同じホピの上司が彼女に向けて書いた文章です。
「ホピとは、大地の祈り、先祖からの教え、そして自らの体験を通じて得ることができる本当の強さと叡智に対して、一生をかけて探求していく努力を怠らない者のことである。探求することによって、命への本当の理解が深まり、鷲のような自らを俯瞰できる目線を獲得し、社会においての自分の役割、そして聖なる命の循環についても謙虚に、思いやりをもった態度で臨むことができるのだ・・・」と。

著者はこの文章を書いた人を探し出し、インタビューをしています。そして彼は著者に向かってこう言うのです。
「ホピには他者を押しやって独占するような排他的な考えはありません。誰をも喜んで受け入れます。互いに学び合い精神的に高め合う、心の豊かさに価値を置くのがホピ的な考え方です。
そして、こうした精神はホピに限らず、より良く生きるための、世界に共通する考え方だと思っています。国など関係ありません。人間はよりよい人間へ進化することも、より良い未来を選択することもできるはずです。(後省略)」

文章だけ見るときれいな単語の羅列ですが、平和を語る人々の中で彼らの抜きん出ているところは、これを建前でなく地で成して生きていこうとしているところです。「本気で生きるとはこういうことか」と自省の念にかられます。
「コンクリートに囲まれた生活でも、心をすがすがしく保つことはできるはず」と思った一冊でした。

(この記事を書いた人/東村山キヨ)

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